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「つ・・・っ、つ か れ、た・・・!!」





カッシェルたちから逃げるため、私達は全速力で走っていた。
最後の方で走っている私は、みんなを見失わないように必死。
こんな『帰らずの森』なんて呼ばれる場所でひとりになったら、私一生出れません。


私の息絶え絶えの声が届いたのか、先頭を走っていたモーゼスは足を止めてくれた。
他のみんなも、敵が追ってきていないか確かめると、心配そうに声をかける。





「大丈夫か?
「お・・・おう・・・!」





足を止め、息を整えてからセネルの言葉になんとか返事をした。
息切れをした状態じゃ、説得力がなかったかもしれない。


だけど、意外と他のみんなも疲れていたようで。
汗を拭い、息を整えようとしている。

特にノーマは疲れているみたいで、地面に座り込み、肩で息をしていた。





「モーゼス、ここはどこら辺なんだ?」
「・・・もう少しで森の出口じゃ」





めちゃくちゃに走っていたと思っていたのに、意外と考えて走っていたらしいモーゼスの言葉に思わず驚く。
冷静さがなければできない行動に、ちょっとは頭が冷めたのかと少し安心。

しかし、さっきの怒りやら悲しみが表情に表れ、いつも元気な彼の顔には笑顔がなかった。


いつも元気な彼だっただけに、悲しい表情をする姿が痛々しい。





「それじゃあ出発するぞ」
「ああ」
「へーい」





少しの休憩の後、私達は再び走りだした。




+++++++




「モーゼス!」
「なんじゃ?」





疲れているけれど、私は頑張って先頭を走るモーゼスの横に並ぶ。
彼と同じスピードで走ってるのはしんどかったけれど、隣で走るモーゼスに呼びかけた。

私の呼びかけに振り向きもせず、彼はただ返事を返す。





「大丈夫だって!」





私を見ようとしない彼に少し悲しく思いつつ、大声を出す。

私の言葉に、モーゼスはピクッと反応した。





「モーゼスの仲間なんでしょ?大丈夫、絶対無事だって」
「・・・・・・・・・」
「セネルもだからね!」





少し後ろの方を走っているセネルにも呼びかける。





「シャーリィも、ステラさんも、きっと無事に助け出すんだからね」
「・・・・・・・・・」
「強くなって、襟キモ男から姫君を助け出そうじゃないの!」





走りながらしゃべることはすごく辛かった。
ただでさえ体力がない状態のに、更に削られていく。

だけど、なんだか今言いたい気分だった。





「姫君か〜、じゃあが王子かな?」
「ちょっと!普通ここはセネルでしょ。それに私はジェイという名の王子がい「はいはい寝言は寝て言ってねー」





手を組み、夢見る少女のようなポーズをとりつつ言う私の台詞をノーマが普通に遮る。
いつものことなので、あえてツッコむことはしなかったけれど。





「走りながら寝言を言うなんて、さすがだな」
「そうじゃの!」
「ちょっとちょっと、寝てないから!起きてます!」





あはは。
なんて笑いながら言うセネルとモーゼスに、ノーマには我慢していたツッコミをしてしまう。
お前らは私のことを何だと思ってるんだこの野郎。


だけど、さっきまでの暗いオーラを纏っていたふたりにそれがなくなり、安心したのも事実。
少しぎこちないけど、笑ってくれて嬉しい。





「ちょっとモーすけ!まだ着かないの?あたし走りすぎて死んじゃうよ〜」
「まったく、しゃぼん娘は根性がないの〜」
「みんながみんな、モーすけみたく体力バカなわけじゃないの!」
「そうそう!か弱い私にはとっても辛いのよ」
・・・・・・か弱い?





ベタな反応に、ツッコむ気も起きない。
それに、いつも通りのみんなに戻って嬉しいしね。





「モーゼス、この先はどうなっている?」





今までの森の中とは違う、岩盤に囲まれた場所でウィルが足を止めてモーゼスに訊ねる。
みんなも彼と同じように足を止め息を整えた。

ウィルの問いかけに辺りをキョロキョロと見渡し、口を開く。





「森の出口じゃ。湖のほとりに通じちょる」
「やった!」





あともう少しだ。
そう思い、みんな安堵の息をついた。


そんな時、あたりが大きく揺れる。
地震とは違う、まるで大きな何かが近づいてくるような、そんな揺れ。

みんな不思議に思って辺りを見回す。





「何が揺れちょるんじゃ?」
「・・・きそう。ぜえったい、なんかきそう」
「ちょ、ちょっとノーマ、不吉なこと言わないでよ・・・」
「!―――みんな、端へ避けろ!」





何かに気づいたセネルは目を見開き、そして大声を出した。
セネルの声にみんな反応し、急いで端へと避ける。
その際、後ろから何やらデカイ怪物が。





わああ〜〜〜っ!?
どわーーーーーっ!?
「いっ、今のは・・・?」





元の位置に戻り、クロエが動揺を隠せないように言った。
みんな、怪物が過ぎた先を見つめる。


今のは一体なんだったのか?
今まで森にいた、普通の魔物とは全然違う。

頼むから、そのままこっちに戻ってこないでください。



そんな私の願いも虚しく、その怪物は私達の方へ戻ってきやがった。
道をちょうど塞いでしまっている状態の怪物。
先へ進むには、こいつと戦わなければならない。





「だ〜も〜!もう少しで、森から出られるとこだったのに〜!」





向かってくる敵に、私達は武器を構えた。





「あーもう!このデカアンコウ、食うぞゴラァ!?エンシェントノヴァ!!」





相手はデカいアンコウ。
炎系の晶術なら結構効くだろうと、上級晶術を喰らわせる。
こんな状況でも、まだ上級が使えるなんてちょっと偉いよ私!


私の晶術によってひるんだ敵を、セネルとクロエが一気に攻撃する。
しかし、疲れのせいか彼らの攻撃にいつものような威力がない。
戦闘を始めて間もないけど、息が切れはじめている。



それでも諦めず、みんな必死に戦った。
ブレスでひるんだ隙に攻撃。

その繰り返しをして、なんとか勝利。
みんな疲れ果て、肩で息をする。





「辛いだろうが、もうひと踏ん張りだ。追っ手が来る前に出発するぞ」





疲れていたがウィルの言葉に頷き、なんとか立ち上がり先へと進む。
早くこの森を出なくては。

それだけを考え、私達は重い足を動かした。




+++++++++




「はあ〜!やあっと森の外に・・・・・・に!?
うっわ・・・





先へと進んだ先には、数人の敵兵とメラニィ。
そしてさっきの怪物が3、4匹くらい待ち構えていた。

やっと森の外に出られたと安堵の息をつくことも許されず、私達はこの状況に愕然とする他ない。





「やっときたかい。遅かったね」
「メラニィ・・・!」
「も〜イヤ・・・」





倒しても倒しても、どんどん出てくる敵に、ノーマは涙声で呟き地面にしゃがみこんだ。
他の皆も、彼女のようにしゃがみこみはしなかったが、疲労の色が隠せていない。

ヴァーツラフとの戦闘。
どんどん出てくる敵兵との戦闘。
そして、さっきの怪物との戦闘で、私達は本当に疲れきっていた。


目の前にいるトリプルカイツと敵兵、怪物を目にして気が遠くなりそう。





「あたしら、もう終わりだよ!こんなの、絶対絶対・・・かないっこない!」
「アハハハハッ!」





諦めきっているノーマを見て、メラニィは愉快そうに大声を上げて笑った。
ソレに対しムカついたけど、反論する体力を使うのが惜しい。


その時だった。


さっきの揺れとは違う、大きな地震のようなものが起きた。
辺りは揺れ、湖の底から何やら大きな建物が現れる。

そんな光景に口を開けていると、突然誰かに腕を掴まれた。






「モーゼス・・・?」






私の腕を掴んだのはモーゼスだった。
私の小さな呼びかけに答えず、彼はただぐいぐいと私を引っ張り走り続ける。

チラッと敵の方を見ると、あの光景に目を輝かせていた。


そうか、敵があれに気を取られてる隙に逃げるのか。
いきなり走り出したことに納得し、私はモーゼスに腕を掴まれつつも走り続けた。
向かうのは自分達が来た道。

またあの森を彷徨うかと思うとうんざりするけど、今ここでメラニィたちと戦うよりはうんとマシだ。




++++++++




「はあ・・・はあ・・・」
「もう・・・逃げても無駄だって・・」

「諦めるな!」





もうダメだ。
そう呟き続けるノーマにウィルは叫んだ。


ノーマの気持ちもわかる。
あれだけ何度も追い詰められ、戦い、逃げて。
みんながみんな、彼女と同じ気持ちだろう。

ただ、みんなの気持ちを口に出してるのがノーマだっただけ。




さっきのウィルの声を聞きつけたのか、前から敵兵がやって来る。
また戦闘か・・・なんて思いつつ、さっきの状況よりはマシだと考え武器を構えた。






「たかが3人くらい、なんじゃあ!」
「いや、後ろにもまだいる!」
「あーもう!敵兵無断に多すぎだっつーの!!」
「おのれ・・・!」






3人だと思った敵兵は更に増えた。
いつもなら、「こんなの楽勝!」とも思えただろうけど、今は辛い。
戦いっぱなしに、どうにかなってしまいそう。

追い詰められるという恐怖感。
それによって、精神的にも辛いものがあった。





「ド畜生ォ!」





それでも戦うしかないと、武器を向けようとすると、



ドガッ





「!?」






数人の敵兵が、いきなり自分達の仲間であるはずの兵を倒す。
倒された敵兵は地面に転がり、動かない。

いきなりの展開に、みんな驚いていた。





「仲間割れ・・・?」

「諸君らを助けたのは、変装した私の部下だ」





ノーマの呟きに答えるように、誰かが答えてくれる。
聞き覚えのない声。
男性・・・のちょっと年とった感じ。





「その声は・・・・マウリッツさん!」





聞きなれない声。
しかしセネルだけはこの声の主を知っているようで、目を見開いた。

その声が聞こえたかのように、前の方からひとりの老人・・・とまではいかない人物が現れる。
金髪の髪に、青色がメインの服。
まるでフェニモールのような感じの、ヒラヒラ感溢れる・・・そんな服。(どんな服だ)






「誰・・・?」

「久しぶりだな、セネル君」





驚いているセネルに、知らない人物に眉を顰める私達。
そんな私たちを見比べ、マウリッツと呼ばれた人物は微笑んだ。










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まじめな話は嫌です。
さっさとジェイ出てきておくれ・・・!(切実)