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「それにしても、入り口とは違って警備が手薄ねー」
「侵入してこないとか思っとるんじゃろ」





雪花の遺跡に潜入して暫く経つけど、全然敵兵がいないことに疑問を感じる。
入り口は警備の人数が無駄に多かったのに。
いざ潜入してみると、敵といえば魔物ぐらい。ヴァーツラフ軍の兵がまったくいない。

モーゼスと一緒に「馬鹿にしてんのかー」と愚痴を言い合う。





「―――いや、そうでもないようだ」





私達の先頭に立つセネルが、そう言って戦闘態勢に入った。
セネルが睨む先から魔物の荒い息遣いが聞こえてきて、私達もセネルに習ってそれぞれの武器を構える。





「ヴァーツラフを守る、門番っちゅうわけか!」
「門番って・・・ヴァーツラフってやつ、魔物飼うのが趣味なわけ?ウィルと一緒じゃん」
「俺は魔物を飼ったりしない。ただ、生きたまま捕らえてじっくりと解剖するだけだ!
「そっちの方が嫌なんだけど」
「気をつけろ、来るぞ!」





扉の先から出てきた魔物に思わず顔を顰める。
門番って。せめて、一番強い兵とか置いたらどうだろう?ヴァーツラフさんよー。(何キャラ)


セネルの言葉が合図だったかのように、魔物は私達へと突進してくる。
ウィルとノーマの詠唱の邪魔をさせないように、セネルとクロエが前で食い止めた。
しかし相手の力が強いのか、あのふたりでも少し押され気味。

そんなふたりを援護するように、モーゼスは中衛から槍を投げつける。
モーゼスの槍を喰らった門番は、少し辛そうに叫んだ。





「ちょーっと、前衛!しっかり前で食い止めてよ〜!」





モーゼスの槍を喰らってもまだ怯まない敵。
セネルとクロエは再び攻撃をしかけるが、それもあまり効いてないようだった。


前で食い止めることができずに、どんどん後ろの方へと攻めてくる。
ノーマは前衛のふたりに文句を言いつつ、焦りながら詠唱を続けていた。





「おらぁッ!」





いつもはノーマたちと一緒に後衛から晶術を使っていたけれど、今回ばかりは私は前衛へと足を動かす。
そしてセネルとクロエの攻撃によって少し動きが鈍った隙に、私は思いっきり剣を突き刺した。
斬れた相手の傷から臭う鉄の香り。

何度戦っても、どうにも血の臭いには慣れない私。
少し顔を歪めつつも、相手から視線を外さない。





「サンダーブレード!」
「ローリングストーン!!」





私が相手から剣を引き抜くと同時に、ノーマとウィルのブレスが炸裂した。
それによって相手がのけぞったのを見逃さず、セネルとクロエが再び攻撃する。

隙のない攻撃に、門番もそろそろ弱ってきているようだった。
足元はふらついて、それでもなお私達に向かってくる。





「あーもうしぶといな!」
「まるでジェージェーへの愛みたいだね!」
「ちょっとノーマ!その例え嫌なんですけど!」





少し余裕が出てきたのか、ノーマが冗談交じりに(いや、本気かもしれないけど)言ってきた。
そんな彼女の言葉に、他のみんなも「そうだな」と納得している。
反論したかったけど、相手から目を離すわけにはいかない。

少しでも早くみんなに文句を言うためには、さっさと相手を倒せばいい。


私は相手へ一気に駆け抜け、そして門番の身体を斬りつけた。

すでに血をたくさん流していたため、相手はもうフラフラ状態。





「鷲羽!」





足元もおぼつかない魔物へ、モーゼスが空中から強烈な槍を投げおろす。
それがとどめとなったのか、相手はもう動くことはなかった。

敵が倒れたことを確認し、みんな武器を収める。





「ナーイス、モーゼス!」
「おう!」





モーゼスと笑い合い、手をパンッと合わせた。





「あ、そうだ!さっきの魔物に対しての例えなんだけど・・・」
「よーっし!先に進もう!」
「おー!」
無視かコラーッ!





さっきの魔物の例えの話を思い出し、みんなに向かって文句を言おうとすると、一斉に先へと進み出す。
それでも文句を続けようとしたけど、みんなは無視の一点張り。

そのままみんなは奥へと進んでしまい、この場には私ひとりになってしまった。





「・・・・・・・なんか、悲しすぎる・・・っ!」





ひとり寂しくポツリと呟き、私はみんなの後を追うべく扉の奥へと歩き出した。




++++++++




「ステラァァァァァーーーーー!!!!」

!?





みんなの後をひとりで追う中、奥の方でセネルの叫び声が響く。
聞き覚えのない名前。
そして、何故セネルが叫んでいるのか。

よくわからなかったけど、私は駆け出し、セネル達の元へと急いだ。

















「・・・・ど、どういう状況・・・?」





やっとのことでセネル達に追いついた私。

その場に着き、周りを見渡すと前の方にみんなの姿が見えて安心する。
しかし、ホッとしたのもつかの間。
この場の空気が異様に静かで、なんだかこっちまで緊張してしまう。


前の方へゆっくりと歩き出す。

そこでは、掴まれている腕を振り払おうと暴れるセネルと。
必死にセネルを捕まえているモーゼスとウィル。
そのちょっと後ろの方で、困惑している様子のノーマとクロエの姿。





「あ、!」
「やっと追いついたと思ったら・・・・・・どういう状況・・・?」





私が来たことにいち早く気づいたノーマが、こっちを向いて名を呼んだ。
彼女達に駆け寄り、この状況を説明してもらおうと訊ねると、ノーマは困ったような表情を向ける。





「それがさ〜、あたしにもさっぱりなんだよね・・・」
「?じゃあ、いきなりセネルが叫んだの?」
「・・・前の方にある球体を見つめた後、何か呟いたかと思ったら・・・いきなり・・・」





ノーマとクロエはお互いに目を合わせ、そう言った。

クロエが言った『球体』を見ようと、視線を前の方に移す。
その球体はとても大きく、すごく目立っていた。
一体なんのためにあるのか?


更によく球体を見つめると、その球体の中に人がいることがわかる。


あれが・・・ステラ?





「ステラ・・・どうして、こんな・・・っ!」





いつの間にモーゼスとウィルの手から逃れたのか、セネルが球体を殴りながら声を震わせ呟く。
その声は悲痛なもので、聞いてるこっちまで辛くなる。

一歩、球体へ近づく。


球体の中にいる人は、長い金髪を靡かせた、綺麗な女性だった。
彼女の目は固く閉じていて。
眠っているのか。
それとも・・・





「よくここまで来たな」





誰かの野太い声で私の思考は止まった。


その声にみんなはビクッと反応し、声のした方を一斉に向く。
声の主を見るセネルの瞳は、怒りに満ち溢れていた。





「ヴァーツラフ・・・・ッ!!」

「お兄ちゃん!」





セネルがヴァーツラフと呼ぶ男は、なんともいいがたい顔。
そしてもっちりした筋肉を包む鎧に、よくわからない襟。
何・・・その襟は何・・・?


一言で言うとキモ男の隣に、懐かしいシャーリィの姿があった。
やっと会えた自分の妹を見ると、セネルは彼女の名を叫ぶ。





「シャーリィ!そんなキモ男の隣にいないでこっちへおいで!」
「ダメなんです・・・こいつのあまりのキモさに力が・・・っ!」
「ちくしょうヴァーツラフ!卑怯よ!」





シャーリィに会えたんだから、さっさと助けて逃げてしまえ。
そう思って彼女を呼ぶと、悔しそうにシャーリィは逃げられないと言った。

あまりのキモさに力が出ないなんて・・・!
ちくしょう。こいつのキモさには、そういう裏があったのか!





「あのキモさは作戦の内だったのね!敵ながらやるじゃない」
、相手が傷ついてる様子から、どーもそうじゃなさそうだよ」





私の肩を叩きながらノーマがそう言ったので、キモ男へと視線を移した。
彼女の言う通り、相手は傷ついているようで、肩をプルプルと震わせている。

隣に立つシャーリィからの「キモ・・・ッ」という視線に耐えられなかったのか。





「貴様ら・・・っ!」





悲しみに震えているわけではなかったらしく、ヴァーツラフは怒りに満ちた目を私に向ける。
ひぃぃっ!キモ男と目が合ってしまった!





「そんな話はどうでもいいんだ!」
「何だと!?」
「それよりステラだ!どうして三年前に死んだはずのステラが・・・!」





キモ男と目が合ったことで精神的にやられた私。
そんな私を横目で見ながら、セネルはヴァーツラフに向かって叫んだ。
すげぇ・・・よくあんなのと会話できるな・・・。


そう思いつつ、「三年前に死んだ」というセネルの言葉が気になった。

秘密の地下道でシャーリィと会話したとき、「三年前に姉が死んだ」と言っていた彼女。
そしてセネルもこの女性が「三年前に死んだ」と言っている。


まさか、この人がシャーリィのお姉さん・・・?
でも、確かにシャーリィは三年前に死んだって言ってたし・・・。
それは彼らの勘違いで、本当は生きていたとかいう感じ??





「死んではいなかったのだ」
「!」
「三年前・・・その女は生きたまま、我が軍の手に落ちたのだ。そして三年もの間、その球の中で眠り続けている」
「生きて・・・?」





口の端を吊り上げ言ったヴァーツラフの言葉に、セネルは目を見開く。

そして、力が抜けたようにその場にしゃがみこんだ。
小さく、小さく何かを呟きながら震えている。


どんどんわけがわからないまま進んでいく彼らの会話。
私達はまったくといっていいほど、話についていけなくなっていた。





「ちょ、ちょっとセネセネ!この人誰なの?一体何の話して・・・」
「そこにいるのは、メルネスの娘の姉だ」
「!シャーリィの・・・?」





セネルの代わりにヴァーツラフがノーマの問いに答える。
思いがけない言葉だったのか、みんな驚きに目を見開くと、再びステラと呼ばれた女性を見つめた。





「まさか、そんな・・・ずっと生きていたなんて・・・」





大きな球体の中で、今も眠り続ける彼女を見て、セネルは悔しそうに拳を握った。





「ヴァーツラフ・・・よくも・・・!」





そして、自分を嘲笑うかのように見ているヴァーツラフを睨む。


ステラを苦しめている、この男を。
妹を苦しめようとする、この男を。


セネルの目には怒りが満ち溢れ、拳をきつく握り締める。





「話は終わりだ。ここまで辿り着いた貴様らの蛮勇、認めてやろう」
「お前に認めてもらってもな・・・」
「私手ずから、相手をしてやる!」
「けっ、上等じゃ!」





自分を睨むセネルを見た後、ヴァーツラフは戦闘態勢に入った。
武器を構える様子がないことから、セネルと同じように拳で戦うのかもしれない。
・・・このキモ男と一緒なんて、セネル可哀想・・・。


敵が構えたのを見ると、他のみんなも相手を睨みつつ武器を構える。
私もみんなに習って剣を構えた。





「お前が・・・お前のようなやつがいるから、ステラは・・・っ!」





ゆっくりと立ち上がり、セネルも戦闘態勢へ。
相手を見据えながら拳を構える。





「ヴァーツラフーーーーッ!!!!」





セネルはそう叫ぶと、ヴァーツラフに向かって一気に駆け出す。
それに続いてクロエも敵へと突っ込んで行った。

他のみんなは、いつものように自分の役割を果たす。


前衛が足止めをしている間に、後衛がブレスをかます。
そして一気に攻撃をして、相手が攻撃する隙を与えず一気に片付けるつもりだった。





「がっ」
「うぅっ」
「!・・・セネル!クロエ!」





しかし、前衛のふたりはあっさりと倒されてしまう。
深手を負ったふたりを癒す暇もなく、ヴァーツラフは一気にこっちへと向かってきた。





ガッ





「・・・・・・・っ!」





攻撃をなんとか防ぐ。
相手は拳、こっちは剣だというのに、私の方が押されていた。
相手の攻撃を防ぐ剣と腕は震え、そう長くはもたないだろう。


力の差は歴然としていた。





「うっ!」
ッ!」





拳を防ぐ力が少し緩んでしまった隙を見逃さず、ヴァーツラフは私の腹部を思いっきり殴る。
そのまま軽く吹っ飛ばされ、私の身体は床へと叩きつけられた。
腹部を殴られたせいか、それとも床に叩きつけられた際に切ったのか、口の中に血の味が広がる。


たった一撃だというのに、私の身体は思うように動かない。
かろうじで指先が動く程度。



ヴァーツラフは私を倒した後、モーゼスへと向かっていった。
そして彼もやられてしまうのが見える。





「・・・・・・・っ」





後衛のふたりも倒され、私達は誰一人動けなくなっていた。





「なんて酷いことを・・・!」





床に力なく転がる私たちを見て、シャーリィは声を震わせ呟く。
そんな彼女の隣でヴァーツラフが笑っているのが見えた。

床に叩きつけられた時、頭を打ってしまったのかボーっとする。
そっと頭に手をやると、自分の手には赤い血がついていた。





「うっ!」





セネルの声が聞こえ、自分の手からセネルへと視線を移す。
ボロボロになった彼は、いまだヴァーツラフに殴られ、蹴られていた。

それを止める力さえ、出てこない。





「お願い、もうやめて!!」
「止めさせたいなら封印を解け。さもなくば兄の命はないぞ」
「・・・・・!」





封印・・・?





「それとも、血の繋がらぬ兄など・・・助ける義理などないか?」





封印を解けと言われ黙るシャーリィに、笑いを含みながらヴァーツラフは問いかける。
その言葉にシャーリィは目を見開き、他のみんなは驚きからか身体をビクッとさせた。





「今・・・何て・・・?」
「血の繋がらぬ・・・?」
「誰と、誰の血が繋がっちょらんじゃと・・・!?」
「セネル・・・お前・・・」





セネルとシャーリィは本当の兄妹じゃない・・・?





「貴様ら何も知らなかったのか?メルネスの娘に兄などおらぬ」





私達の反応を見て、ヴァーツラフは薄笑いを浮かべながら言う。





「肉親と呼べるのは目の前の、眠り続けてる姉だけだ!」
「く・・・っ!」





・・・なんとなく、そんな気はしていたけど。
セネルとシャーリィは兄妹のはずなのに、シャーリィの話を聞くと、彼女の姉とセネルは結構いい感じの仲だったっぽいし。
シャーリィの姉ということは、セネルの姉か妹になるはず。
なのに、恋仲になることなんてありえない。


だとしたら、セネルは本当の兄じゃないのかもしれない。
私はそんな風に少し考えていた。



私達の目的はシャーリィを助け出すこと。
セネルが本当の兄だろうとなかろうと、関係ない。

そう思ってたけど、結構驚いている自分がいる。





「・・・わかりました。封印を解けるか・・・やってみます。だから、お兄ちゃん達は・・・」
「いいだろう」





シャーリィの言葉に満足そうに言うヴァーツラフ。
その顔がキモくてムカついて、殴ってやりたかったけど、身体が動かない。


セネルを踏みつけることを止め、ヴァーツラフはシャーリィへと近づく。
そして乱暴に胸倉を掴むと、シャーリィの姉が入っている球体の中へと彼女も入れた。





「水を注ぎ込め」





ヴァーツラフがこう命令すると、シャーリィとステラの入る球体の中に水がどんどん注ぎ込まれる。
息が出来ないはずなのに、シャーリィはものともせずただ目を瞑っていた。

そして、初めて会った時のように髪が青く光だす。





「!か、髪が・・・」
「うっそ・・・本当に光ってるよ」
「『輝く人』か・・・」
「やっぱり嬢ちゃんはメルネスじゃったんか・・・!」





ヴァーツラフにやられた傷の痛みに少し慣れ始め、みんなゆっくりと身体を起こしてシャーリィを見つめた。
私もモーゼスに手伝ってもらいながら身体を起こす。

水の入った球体の中で光り輝く彼女らを、私はただ見つめる。
不思議だった。
水の中で息ができることもすごいし、信じられないし。
更に、金の髪が青く光ることも。



暫くシャーリィを眺めていると、突然彼女は苦しそうにもがきだす。





「!いかん、海水が混じったか!」





苦しそうにもがくシャーリィを見て、ウィルが声を張り上げた。
海水が入るとなんなのか。
それはよくわからなかったけど、とにかくシャーリィの身体に海水はダメなんだと勝手に解釈する。





「ちょと!リッちゃん苦しんでるじゃんよ!!」
「シャーリィの身体に海水は毒だ!今すぐ水を入れるのを止めろ!」
「そんなに苦しいか?ならば死に物狂いで封印を解いてみろ!」
「止めろって言ってるでしょ!この襟キモ男!!」





やめろと言う私達の声を無視し、ヴァーツラフは水を注ぎ込むのを止めない。
それどころか、水を入れる速度を上げていた。
このSめ!!


苦しそうにもがいていたシャーリィは、暫くすると静かになった。
いや、気を失っただけかもしれない。



そして次の瞬間、ものすごい光が球体からあふれ出す。





「!これだ・・・この反応を待っていた・・・!!」





光り輝く彼女を見て、ヴァーツラフは興奮したように言う。
こいつマジでキモイです。


突然の光に、みんな驚き声も出ない。
何が起こってるのか?
これが「メルネス」の力なのか?

もう何がなんだかサッパリだった。





パアァンッ





光り輝く球体は突然割れ、その中に入っていた水が少しかかった。
球体の中にいたふたりは、割れた球体の中でぐったりとしている。

その様子に満足そうに笑い、ずっと球体を見つめていたヴァーツラフの目が私たちを捉える。





「そいつら全員始末しろ」





冷たく重い声で、部下に命令するヴァーツラフ。

その命令を待っていたかのように、ふたりの部下が武器を構え私達の方へ詰め寄ってくる。
ヴァーツラフにやられた私達は、身体が動かずただ自分のおかれた状況を理解し顔を青く染めた。



―――もうダメだ。



そう思ったときだった。





割れた球体の方から金色の光が輝き、その光が蝶のような形へと変化する。
その金色の蝶はヴァーツラフ、そしてふたりの部下をふっとばし、傷を負い気を失っているセネルへと近づいた。


そのまま光はセネルを包み込み、暫く進んだ先にあった脱出口のような穴にセネルを落とす。





「えっ?な、何・・・?」





いきなりの展開に頭がついていかない。





「あ、あれきっとリッちゃんだよ!あたしらに逃げ道教えてくれたんだ!」
「とにかく俺たちも後を追おう!」
「しかし・・・シャーリィは?」
「今は諦めろ!」





とにかく、ここから逃げなくては。
私達はあの光がシャーリィのものだと信じ、セネルの後を追った。

シャーリィを助け出したかったけど、今は自分達が逃げるのが精一杯。





「・・・うわっ!?」





私もみんなの後を追おうと立ち上がるが、足首に鈍い痛みが走り思わずしゃがみこんだ。
どうやら、床に叩きつけられた時に足までも怪我してしまったらしい。
ああもう!


痛む足。
頭を打ったせいでフラフラする。
腹も痛いし。
ああヴァーツラフの野郎、やってくれたな!

それでも立ち上がろうとすると、突然腕を掴まれ身体が中に浮く。





「!?モーゼス・・・!」
「ワイが運んじゃる。しっかり掴まっとれ!」
「う、うん」





いきなり何が起こったかと思えば、モーゼスが私を抱き上げていた。
思いがけないことに驚きつつ、彼の言う通りにしっかりと掴まる。
私が掴まったのを確認すると、モーゼスは一気に駆け出す。


そしてセネルの入っていった穴へと、思いっきり飛び込んだ。




下へ下へと落ちる感覚。

その感覚が少し怖くて、思わずモーゼスにしがみ付く。





暗い暗い穴を落ちていく私達。

一体どこへ辿り着くのか。

それでも、ただ助かることだけを信じ、穴の中を落ちていった。







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戦闘シーンなんか嫌いだ。
そしてここら辺の話、今までよりも更に曖昧です・・・。