18
「これからジェイと2人で、改造作業を行うキュ」
「時間はどれくらいかかる?」
「一晩いただければ」
「待つしかないか・・・」
・・・ということで、私達は改造作業が終わるまでの間、各自自由時間になった。
セネルはモーゼスに誘われ水泳勝負。
クロエとノーマはそれの観覧。
ウィルは不気味な声を出しながら外へ向かったから、きっとグランゲートの骨でも眺めてるんだろう。
「うへへ」
そして私は、改造作業をしているジェイの後姿をじーっと眺めていた。
最初は寝ようかとも考えたけど、せっかくジェイがいるのに時間を無駄にすることはできない。
改造作業が終わるまで、ジェイの観察をすることに決めたのだった。
せっせと作業をするジェイの後姿はかっこよくて、でも動きひとつひとつが可愛らしくて。
動くたびに鈴が鳴って、更に可愛くて。
黒髪で、鈴つけてて、生意気で。
愛想のよくない彼は、まるで・・・まるで・・・っ!
「黒猫・・・っ!黒猫にゃんにゃん!!」
「・・・・・・・・・・・」
そう!まるで黒猫!
ちっさいから子猫で、黒子猫?(言いにくい)
このままでも充分可愛いけれど、猫耳つけて・・・ついでにしっぽまでつけちゃっったりして!!
「おっといけねぇ。思わずよだれが」
「・・・少しは女性らしくしたらどうですか」
自分を眺め、色んなことを妄想する私を少し睨みつつジェイはこっちを振り返る。
「いやだわジェイくんったら。私はとっても女性らしいわよ☆うふ」
「今すぐその口調やめてください僕を殺す気ですか」
「言ってる事矛盾してるんだけど!」
「女性らしく」と言われたので、いつもと少し口調を変えてぶりっ子ポーズをしてみれば、ジェイは顔を歪めた。
まるで「吐き気が・・・」とでも言いたそうな彼の表情。
女の子らしく=ぶりっ子
という変な方程式が成り立っている私の中では、精一杯の可愛らしさがこれ。
しかし、ジェイには「殺す気か」と言われてしまった。
あれ?これって失敗ですか。そうですか。
「だったら、ジェイの『女性らしい』っていうのをやってみせてよ。ついでに女装なんていかがでしょう」
「どちらも激しく遠慮させていただきます」
そう言って、ジェイは視線をポッポ3世号へと戻した。
再び、私からはジェイの後ろ姿しか見えなくなる。
・・・うぉぅ。後ろ背中でここまで萌えさせるとは・・・なかなかじゃねぇか!!
この世界では珍しい(と解釈している)ダボダボな服を着ているジェイ。
きっとあの服の下には、白くて滑らかなほっそい胴体があるに違いない。
強く抱きしめたら壊れてしまいそうな・・・そんな繊細な身体が・・・っ!
セネルたちのようなピッチピチな服を着れば、ジェイの細い体のラインもわかるだろうけど。
でも、あのダボダボな服に隠れてるってのが私にとっての萌えポイント!
服の下を妄想するだけでご飯何倍でもいけちゃうというミラクル。
モーゼスのように上半身裸・・・ってのも・・・へへっ。
今度モーゼスに協力してもらって、無理矢理ジェイに着せようかしゴツッ
「うぎゃ!?」
「―――また、人で勝手に妄想でもしてるんですか?」
ジェイがモーゼスのコスプレをしている姿を妄想していると、突然デコに衝撃が。
何か固いもので叩かれたようで、デコがじんじんとして痛い。
ふと、ジェイの手元を見ると、彼の手にはスパナが握られていた。
「・・・それで殴った?」
「はい」
「そんなので殴ったらバカになるでしょ!?」
「大丈夫ですよ、元からバカなんですから。逆に頭が正常になるかもしれませんよ?」
感謝してほしいですね。
そう言いながら、ジェイは小馬鹿にしたような目を私に向ける。
・・・その顔も萌えだ。
その萌えに免じ、私は何も言い返さないであげた。
言い返してこない私を見て、ジェイは少し不思議そうな顔をしている。
だから萌えるってば。襲われたいのかコラ。
「ところで、何で私は急に殴られたんでしょうか・・・?」
「人を変な目で見るからですよ」
「見て・・・・・・・ない!!」
「その微妙な間は何ですか」
「ええそうだよ!見てるよ!モーゼスのコスプレしてるジェイを妄想してたよ!」
「誰もそこまで言えだなんて言ってないんですけどね。はは、そんなこと考えてたんですか一回死んでみます?」
笑顔を向け、スパナを構えるジェイ。
だけど全然笑っていなくて、額には青筋が浮かび上がってる。
マジで殺されそうです(汗)
「あっはは!冗談だよ冗談☆(棒読み)」
「ですよね。本気だったらぶん殴るところでしたよ」(にっこり)
目が笑ってねぇ・・・っ!
「そうそう。冗談だよ!それに、ジェイは女装の方が似合うって!」
「あはは、全然嬉しくないです」
ゴツッ
++++++++
―――あっという間に次の日
「皆さん、準備はいいですか?」
一日体を休めた私達。
朝起きて、暫くしてから工房の外に移動させたポッポ3世号の前に集合していた。
まだ少し眠いけど、「もうちょっと寝かせて・・・」なんて言うわけにもいかない。
昨日、私の方が多く休んでるんだから。
私は眠い目を擦り、みんなと同じように集まっていた。
前の方で、ジェイとポッポがみんなに話をしているけど、眠い私にはまったくと言っていいほど聞こえてこない。
「ー、起きとるか?」
「おー・・・」
隣に立っていたモーゼスが、俯く私を覗き込みながら訪ねてくる。
起きてます起きてます。一応。
もう一度目を擦り、私は顔を上げた。
「昨日、寝れなかったんか?」
「んー、まーね。ジェイの妄想してたらいつの間にか朝だったのよ」
「妄想・・・どんなのじゃ?」
「ジェイがモーゼスの服・・・つーかズボン?を着て・・・穿いてるのを妄想してたの」
「ワイのを?」
「そう!普段は見えない生肌が見えるという萌え!だけどモーゼスのズボンが大きくて、落ちそうになるズボンを押さえるのようふふ!」
「なんかその変態っぷりが、さすが!って感じじゃのう!」
「おいそこの変態。一度海に沈めてあげましょうか」
昨日の夜にしていた妄想の内容を話していると、前の方から何だか冷たい視線が。
そーっと前の方を向いてみると、一番前で青筋を浮かべるジェイの姿。
いつの間に持っていたのか、手にはスパナが握られている。
昨日殴られたことを思い出し、私はサッと頭を護った。
そんな私の様子を見て、モーゼスは不思議そうにしている。
「―――それじゃあ、皆さん潜水艦の中へどうぞ」
それ以上何も言ってこないのを確認し、ジェイは視線をみんなへと戻した。
ポッポ3世号の入り口を開け、みんなはひとりずつ中へと入り込む。
みんなに習い、私も潜水艦の中へと入ろうと足を運んだ。
そして中に入ろうとした時、誰かに腕を掴まれそれを阻止される。
「・・・・・・ジェイ?」
みんなが潜水艦に入ったなら、私の腕を掴むのは彼しかいない。
後ろを振り返ると、掴んでいたのはやっぱりジェイだった。
「どうしたの?」
「・・・あ、いえ・・・」
私が声を掛けると、ハッとした様子でジェイは私を見る。
そして私の腕を掴む自分の腕を見えてから、その手を急いで離した。
どうしたんだろ?
「ジェイ?」
「・・・なんでも、ないです」
「いきなり腕を掴んできといて?」
「それは・・・」
手が勝手に・・・
そう言って、ジェイは言葉を濁らせた。
自分のした行動が信じられないのか、ジェイは少し頬を朱に染めている。
自分の手を見つめ、そして私をチラッと見て。
その仕草が無性に可愛くて、思わず襲いたくなってしまう。
手が勝手に?
つーことは、無意識に私を引き止めたってこと?
なんか・・・それって、
「なんでもありませんので、どうぞ潜水艦へお入りください」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・?さん?」
それって・・・・
自分の意思で引き止めるより、よっぽど・・・よっぽど・・・
「萌えるんですけど!」
「!?」
「無意識に私を引き止めたのね!私がいなくなるのが寂しくて、行ってほしくなかったのね!」
「ちょ、勝手に変な解釈しないでください!」
私を引き止めてくれた彼が可愛くて。
愛らしくて。
とてつもなく萌えて。
私の意見に反論する姿もまた可愛くて。
もっ、ももももも
「萌えなんじゃーーーー!!!!」
「ぎゃーーーーーー!!??」
「ガバッ」という効果音がつきそうなほど、私は思いっきりジェイに抱きついた。
そしてぎゅーっと抱きしめる。
私の突然の奇声とジェイの叫び声を聞きつけて、みんなが潜水艦の中から現れた。
「ご乱心じゃ!がご乱心じゃ!!」
「ちょっと、ジェージェーすっごい嫌がってんじゃん!!」
驚くみんなの中からモーゼスとノーマが私たちに駆け寄り、ジェイに抱きつく私をふたりがかりで引っぺがす。
その後モーゼスが私を押さえ、ノーマがジェイを安全な場所へと移動させる。
ふたりの見事な連係プレーに、私は思わず拍手を送った(心の中で)
「はーなーせー!」
「ダメじゃ!」
「何でじゃーーー!」
私を押さえて離そうとしないモーゼス。
なんか・・・こんな展開、前に雪花の遺跡でも会った気がすような。
必死に暴れるけど、やっぱり男と女の力の差は大きい。
更に私より断然背の高い彼に、力で勝てるわけがなかった。
それでも暴れる私を、ジェイは少し息を乱しながら眺めている。
ちょっと、息の乱れた姿も更に萌えじゃないの!
「萌えーーーーーーーーーー!!!!!!!」
「うわっ!?いきなり暴れるのはやめえ!」
「ちょっと、そこのバカ山賊!そこの変態、しっかり捕まえといてくださいよ!」
「何じゃと!?いい加減バカ山賊言うのやめんかい!」
「ちょっとー、話逸れてるってば!早くリッちゃん助けに行かないと!」
「ジェイ萌えーーーー!!!!」
息を乱すジェイを見て私が興奮し、
興奮して暴れる私をモーゼスが必死に引きとめ、
ちゃんと私を捕まえとかないモーゼスに対してジェイが文句を言って、
それに対してモーゼスが怒り、
ノーマが話が逸れてると、本来の目的を必死に伝える。
そんなことが数分繰り返された。
「とにかく、いい加減暴れるのやめてよ〜」
「そうじゃ!早く譲ちゃんを助けに行かんと」
「毎回毎回、別れる度にこんなに時間をかけてどうするんですか!」
「『別れ』だって!なんか恋人同士の『別れ』みたいな響でなんだかす・て・き☆」
「「「ああもうダメだこいつ・・・」」」
3人が声を揃え、こう言った瞬間。
ゴツッ
後頭部に衝撃が。
私はそのまま意識を手放し、瞼をゆっくりと閉じた。
「・・・・セ、セネセネ・・・?」
「こうでもしないと、先に進めないだろ」
「それはそうじゃが・・・これじゃちっとが可哀想じゃ」
「モーゼスさんに可哀想って思われる方が、僕は同情しちゃいますけどね」
「ワレな!」
暴れてなかなか先へ進もうとしないを、セネルは後ろから殴り気絶をさせた。
後頭部を殴られたは意識を手放し、モーゼスの腕の中でぐったりしている。
その様子を少し同情した目で見るモーゼスとノーマ。
「まったく・・・」と言いながら呆れた目で見るセネル。
やっと静かになったと喜ぶジェイがいて、反応はそれぞれ。
「毎回、が暴れてすまないな」
「まったくです。今度はちゃんと捕まえといてくださいよ?」
「ああ」
被害者のジェイに謝り、セネルは再び潜水艦へと戻った。
それにつられて、様子を眺めていたクロエとウィルも中へと入る。
「それじゃ、行ってくんね!」
「さっさとその変態連れていってくださいよ」
「そうじゃの!」
ノーマとモーゼスもジェイに一言言ってから、潜水艦へと姿を消した。
彼らが入ってから暫く経って、潜水艦が海の中へとゆっくりと沈んでいく。
「・・・はぁ」
すっかり姿が見えなくなった頃、ジェイは潜水艦があった場所を見つめ小さく溜息をついた。
毎回毎回、あの人と別れる度に疲れるのは気のせいじゃないだろう。
いや、今回彼女は何もすることなく行こうとしたんだ。
なのに自分がそれを引きとめた。
引き止めさえしなければ、あのままスムーズに事は進んだというのに。
彼女を引き止めた自分の手を見つめ、ジェイは再び溜息をついた。
何故、彼女を引き止めてしまったのか。
ずっと感じられていた彼女の温もりがなくなったことに、少し寂しいと感じてしまうのは何故か。
「ジェイ?」
「ん?」
ボーっと自分の手を見つめ黙るジェイを見て、ポッポが心配そうに訊ねる。
そんなポッポに笑顔を向けるジェイ。
「なんでもないよ」
「ほんとキュ?」
「うん、ほんと」
彼の視線に合わせるようにしゃがみ、ポッポの頭を優しく撫でた。
「さんがいなくなって、寂しいキュ?」
「!・・・そんなことないよ」
「でも、元気がないキュ・・・」
「元気だよ」
「・・・そうキュ?」
「そうだってば!」
しつこく言ってくるポッポに、思わず声を張り上げてしまうジェイ。
それに対しポッポは驚き、言葉を詰らせる。
驚くポッポを見て我に返り、ジェイは小さくポッポに謝った。
いつもと様子が違うジェイに対し遠慮したのか、ポッポは一言言ってから工房へと戻った。
去っていくポッポの姿を見て、ジェイは呟く。
「・・・・・・・・寂しい・・・?」
まさか
「そんなわけない」
寂しいわけがない。
こっちは、あの人がいると疲れるだけなんだから。
いない方が気が楽だし、安心できるし。
寂しく思う理由なんかない。
「・・・・そんなわけない」
彼女の腕を掴んだ手を見つめ再び呟くと、ジェイはポッポの工房へと足を運んだ。
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後半意味わかんないよ。
誰視点だよ。ジェイなんだか第三者なんだか・・・。