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「結構、警備が厳重だな・・・」
「あんなの魔法でバーンとやっちゃえばいいんじゃ・・・」
「そんなことしたら、潜入したのがバレバレだろ」





なんか色々とぐねぐねとした道を進み、山を迂回したりと苦労して辿り着いた雪花の遺跡。
それじゃあ潜入だと意気込むも、入り口の警備が厳重厳重。
私達は物陰から様子を窺うことしかできないでいた。





「強引に突っ込むわけにはいかないか・・・」





入り口を窺いつつ呟くクロエ。
それって、さっき私が言った事と変わりないんじゃ・・・?

だけど、誰もツッコミをいれようとしない。
え?なんですか、この扱いの違いは。
いじめですか。





「何の、これくらいでくじけちゃダメよ!」





文句の1つでも言ってやろうとセネルに話しかけようとした時。
ノーマが少し意気込んだ声でこう言った。
彼女の意見に、モーゼスは「うんうん」と頷いている。





「だよね、ノーマの言う通り!」
「でしょ?どんな困難があろうと前進あるのみ!」
「まったくじゃ!」





意気投合する私とノーマ。
その意見に、更に力強く頷くモーゼス。





「行きなさい、モーすけ!」
ワイだけかい!?
「当たって砕けろモーゼス!お前の死は無駄にはしない・・・っ!
まで何言い出すんじゃ!?」


「どうしてバカ山賊が、皆さんと一緒にいるんです?」





嫌だ嫌だと言うモーゼスを、無理矢理敵の目の前に放り出そうとしていた時だった。

ほんの少しの時間のはずなのに、懐かしいと感じてしまう声。
その声と共に浮かび上がる、あの美しい顔。
そして、その声がした方を振り向けば・・・





ジェーーーイイイ!!!!
「ああうるさい。敵に気づかれたいんですか」
「ジェイジェイジェイジェイー」
「・・・・・・・・・・」





大声をあげて名を呼ぶと、眉を歪めるジェイ。
確かに彼の言う通り。
こんなに入り口の近くで大声を出せば、敵に気づかれてしまうだろう。

それはわかってたんだけど、ジェイに会えて私はもう興奮状態!
思わず大きな声を出してしまう。



私が大声を出すと、みんなは慌てて入り口の方に視線をやった。
安堵の息をしているところを見ると、どうやら気づかれなかったらしい。


今度は小さな声で、彼の名前を連呼しながら抱きついた。
久しぶりのジェイを満喫する。

それに対しジェイはただ呆れるだけ。





「やっぱジェイはいいね!癒されるっていうかむしろ萌えるね!萌え!
あーはいはいそうですか。どうでもいいですけど離れてください」
「なんかジェージェー、もう何でもいいや!って感じだね」
「女子に抱きつかれて喜ばんとは、変な奴じゃの」
「どっかのバカ山賊とは違いますので」
「何じゃと!?」
「お前達、静かにしないか!」





ジェイとモーゼスの言い合いが始まりそうになると、小声でウィルがふたりを怒鳴りゲンコツを喰らわせた。

そのゲンコツがすごく痛かったのか、ジェイもモーゼスも頭を抱えてうずくまっている。





「ジェイ、何とかして中に潜入する手はないか?」





いまだに痛そうに頭を押さえるジェイに、ウィルは小声で訊ねた。
まだ少し痛いのか、ジェイは頭を押さえながらウィルの質問に返答する。





「ないこともありませんけど・・・・・・って、いい加減離れてくれませんか?動きづらいんですけど」
「ダメ。今萌えの充電中
「意味わからないこと言ってないで、離れてくださ・・・・・・」





べったりと張り付いて離れない私を、無理矢理離そうとするジェイ。
肩を掴み、ぐっと離す。

しかしその動きは途中で止まり、ジェイは私を凝視していた。



え?何?私の顔に何かついてる?
なーんて、お決まりの台詞を心の中で言ってみたり。

だけど、ジェイの視線は私の顔ではなく、もっと下。
下って・・・・





「いやんエッチ!ひとの胸じろじろ見ないで☆」





ちょっとおどけてそう言ってみるも、ジェイは無反応。
え?ちょっと。
反応ないと、ものすごく虚しくて恥ずかしいんですけど。


そんなおどけてる私とは裏腹に、ジェイは真剣な顔でゆっくりと口を開いた。





「その血・・・どうしたんですか?」
「血ぃ?」
「あなたの腹部についているものですよ。乾いてはいますが、どう見てもそれは血でしょう」
「あー、これ?」
「敵にやられたんですか?」
「いや、だから・・・」





ジェイの質問に答えようにも、ジェイ自身がどんどん話してきて答えようにも答える隙がない。
私は肩をぐっと掴まれながら、ただ「違う」と言うだけ。





「これは私の血じゃないんだって」
「それでは返り血ってことですか」
「それも違う」
「じゃあ何なんですか」
「そんなに気になる?いやん、私愛されてるー」
「・・・・・・・・・・」





あまりに真剣に訊いてくるもんだから、少しおどけた感じで言ってみる。
本当は「ワルターの血」と言って会話を終わらせようとも思ったんだけど、ジェイはワルター知らないし。
「ワルターって誰」ときかれて、説明するのも面倒だし。

ジェイは黙り、何も言ってこない。





「・・・・・ジェイー?」





不思議に思って呼びかけてみると、今度は溜息をつかれた。





「とりあえず、怪我はしてないんですね?」
「うん」
「・・・・・・・・よかった」





私の血じゃないということがわかり、今度は安堵の息を漏らすジェイ。
その際に小さく「よかった」と呟いたのは気のせいじゃないと思う。

「よかった」なんて言ってくれるってことは、私を心配してくれた?
もしかして大怪我をしてるんじゃ!?みたいに思ってくれた?
そう受け止めていいですか?


いいですよ!(自分で)





ジェーイーーーー

うわっ!?何なんですか」





心配してくれたってことが無性に嬉しい。
すごく嬉しい。
めちゃくちゃ嬉しい。


もうとにかく嬉しくて、私は再びジェイに抱きついた。





「心配かけてごめんねー。私は大丈夫よハニー」
「な・・・っ!?誰も心配なんかしてません!」
「うっそだー!ジェージェー、の血見たとき驚いてたじゃん〜。心配したんでしょ?」
「違います!」
「もーう!照れちゃってか・わ・い・い☆」(おでこツーン☆)
「うっわぁ・・・無性に殴りたくなるんですけど
「大丈夫!その拳に込められた私への愛はちゃーんと受け止めてあげる!」
誰かこの人の通訳してくれませんか





どんどん額に青筋を浮かべるジェイ。
おっといけねぇ。遊びすぎたらしいです。

ちょっと怖くなったので、目を逸らしつつ腕に引っ付く形にする。
抱きつくよりはましでしょう。
ああでもジェイのような細い腕に引っ付いてると、折れてしまいそうで心配になる。
ちゃんと食べてるのかしらこの子。





「もうこの人無視して話を進めますが、いいですか?」





溜息をつきながらこう言うジェイに、みんな無言で頷く。
それを確認し、ジェイはどこからか地図を取り出した。

いいな地図。いつもジェイの近くにいれて。
生まれ変わったらジェイの地図になりたい(意味不明)





「あ、そうそう。情報をあげる前に、ひとつ訊ねておきたいことが」
「何だ?」
「みなさんは、僕の情報にどれだけ払う覚悟がおありですか?」
「ジェイへの愛を捧げます!」
断ります






真剣に言ったら、即行で却下されてしまった。
どうして!?ジェイへの愛だったら無限に湧き出てくるのに!!





「所持金全部でどうだ?」





ジェイの質問に暫く考え込むと、セネルはそう言った。
そんなセネルを見つめ、ジェイは返す。





「全部と言ったって、どうせ大した額じゃないでしょう?」
「むっき〜!その言い方ムカつくー!」
「今回の場合、料金は固定額です。だからはっきり言ってしまいましょう」





ジタバタと怒るノーマをスルーし、ジェイはみんなを見つめ静かに言葉を区切る。
ひとりひとりを見た後、一呼吸おいてジェイは口を開いた。





「皆さんの命を賭けてください」
「命・・・?」
「はい。それが今回の情報の対価です」





どうですか?

視線でそう訊ねてくる。
みんな一瞬驚いたようだったが、その表情は消え、真剣な顔で見合す。

そしてウィルが逆にジェイへと問う。





「それだけでいいのか?」
「それだけって・・・命ですよ?命より高いものなんて、ないと思いますけど」
「それじゃあジェイへの愛もつけましょうか」
「はっはっは。絶対いりません」(にっこり)





いい笑顔で断るジェイ。
うふふ、とっても素敵よ。その笑顔。





「構わない。もとより私達は、何をするにも命がけなのだから」





ジェイと私の会話を見届けてから、クロエが真剣な顔つきでこう言った。

何をするにも命がけ。

その言葉を聞き、ジェイはみんなに「契約成立ですか?」と問う。
それに対し、みんなはまた無言で頷く。





「・・・・では、地図を見ながらご説明します」





閉じていた地図を、みんなに見えるように地面に広げた。
そして地図のある一点を指で差し説明を始める。

隣で説明を始めるジェイをじーっと眺める。


綺麗。
スーッと通った鼻筋に、形の整った唇。
大きな藍色の瞳に長い睫毛。
白い肌はきっとスベスベなんだ。



さ、さわりてぇ・・・っ!!





「―――なんですか」
うおっ!?





欲望が抑えられず、彼の綺麗な肌に手を伸ばすと、突然大きな瞳が私を捕らえた。
さっきまでみんなに説明をしていたはずなのに!





「な、なんのことかなー・・・?」
「説明している間、ずっと見てたでしょう」
「私からの愛届いた?」
全然





まさか、スベスベお肌(妄想)を触ろうとしてました!
・・・なんて言えるはずがない。
適当なことを言ってみたけど、ジェイにはバレバレのようで。
溜息はついたが、それ以上なにも言ってこなかった。

仕方ない。肌を触るのはまた今度にしよう。



・・・・・・夜這いでもしようかしら。





・・・、顔怖い
「ぅえっ!?怖い!?」
「怖いっていうか・・・ニヤついてて気持ち悪い
「気持ち悪いって!女の子に言っちゃいけない言葉よ!」





それじゃあいつ夜這いをしようか・・・?
なんて考えていたら、セネルに「怖い」と言われてしまった。
その顔は少し引き攣っている。


顔に手を当て、その「怖い」らしい表情を直す。
妄想すると、どうしてもニヤつくのはおさえられない。
今度からは妄想するときは場所を考えないと。





「現地にはポッポを向かわせてありますから」
「感謝する。みんな、巨大風穴へ行こうとしよう」





ジェイが地図をしまいながら言うと、ウィルは笑みを浮かべて礼を言った。
・・・・おっさんの笑みは、萌えねぇなあ(あのな)

話を全然聞いてなかったので、どこへ向かうのかわかってなかったけど、ウィルがご丁寧に説明してくれて助かった。


みんなウィルの言葉に頷き、雪花の遺跡を出る。





「バイバイ、ジェイ。寂しくなったらいつでも追いかけておいで・・・!」
「ご心配なく。そんなことは絶対ありえませんので





ジェイの手を両手で包み込みつつ言ってみると、彼は笑顔でそう返す。
ああ、そのつれない感じもまた素敵。
萌えだよ、萌え。





「じゃあ私が追いかけて・・・」
シャーリィさんを助ける気ありますか
「あるよ!でも萌えがないと力が出ないの」
「そんなこと知りませんよ」





だいたい、「モエ」って何ですか。
そう言いながら、ジェイは怪訝そうな顔をする。





「・・・そうそう、ジェイに謝っておかなきゃね」
「?何をですか?」
「毛細水道で、勝手な行動をしたこと。怒ってるかな〜と思って」





チラッとジェイの様子を窺ってみる。
彼の表情は、特に怒っている様子もなく、いたって普通だった。
あれ?
怒って・・・ない?





「別にいいですよ」
「えっ!?怒ってないの?」
「はい」
「よかったー・・・!」





よかった。ほんとによかった。
嫌われたら、私立ち直れない。
力も出ない。

もともと好かれてはいないだろうけれど、今以上嫌われてしまったら本当にへこむ。





「確かに、勝手な行動をしたことには驚きましたけど」
「・・・・・けど?」
「結果、あなたの戦闘能力などわかりましたし、情報が手に入って逆にラッキーでした」





いつの間に観察されてたのやら。
まあ、別に知られちゃいけないってことでもないからいいけどね。





「なんなら、もっと詳しい情報をあげよう!好物はジェイ。趣味はジェイ。とにかくジェイ!」
「セネルさーん、この変態さっさと連れてってくださーい」
「わかった」
「うわ、ちょ、セネル!」





ジェイジェイ言う私に笑顔を向けたかと思えば、ジェイは大声でセネルを呼ぶ。
入り口の方でこっちを眺めていたセネルは、彼に呼ばれるとすぐにこっちへと足を運んだ。
そして私の首根っこをひょいっと掴んでしまう。

そのせいで、ジェイとの距離ができ、繋いでいた手が離れてしまった。





「ジェイの手が!温もりがなくなった!!
「大きな声を出さないでください。敵に見つかるって何度言えばわかるんですか。あなたバカですか」





静かにしてくださいよ。
溜息混じりに言うジェイ。
後ろの方でも、私を掴んでいるセネルが溜息をついているのがわかった。





「さっさと行くぞ」
「わーっかったから!わかったから首根っこ掴まないでよ!猫みたいじゃん!」
「猫なんて可愛らしいものじゃないですけどね」
「まったくだ」
「失礼だぞお前ら!」





いくら言っても離そうとしないセネル。
放した瞬間ジェイに抱きつこうと考えてるのがわかったんだろうか。

暴れても、どんなに暴れても離さない。


最終的に私は諦め、暴れることを止めた。





「世話になった」
「今度こそうまくいくよう、祈っています」
その祈ってる姿を写真に収めてもよろしいでしょうか
「あっはは。さっさと行っちゃってください」(にっこり)
「じゃあな」





そうしてお別れも言えないまま、セネルに捕まれたまま雪花の遺跡を後にした。







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ジェイって、「ラッキー」って言いますかね?