14
「―――!」
「・・・・・・・・・んあ?」
突然大きな声で名を呼ばれ、私はゆっくりと目を覚ました。
目の前には、私を心配そうに見つめるセネル、ノーマ。
そして後ろの方にウィルとクロエ・・・・・・・・と半裸野郎の姿。
んん?何で半裸野朗がここに??
「・・・・・・・痛っ」
ゆっくりと起き上がろうとすると、腹部に激痛が走った。
その痛みに耐え切れず、思わず声を上げてしまう。
それを見て、私が起き上がるのをセネルは手助けしてくれた。
「・・・・・・・・・おはよう」
「よかった〜!いつも通り変なだー!」
「ちょっとノーマ、どういう意味さ」
起き上がり、とりあえず挨拶をしてみるとみんな安堵の息を漏らす。
そして少し涙目のノーマが抱きついてきた。
え?何??
「何かあったの?」
「何かあったの?じゃないよー!ここにやっと辿り着いたって思ったら、中には空飛ぶ男が血だらけで倒れてるし!知らない少女は怯えてるし!しかもまで血だらけで倒れてて、こっちは驚いたんだかんねー!?」
「血だらけ・・・?」
「お前、自分の服を見ろ」
前半ノーマが言ってたことはわかる。
空飛ぶ男はワルターでしょ?
んで、怯える少女はフェニモール。
だけど、私が血だらけって何?
そんな疑問を感じていると、セネルが私の服を指差した。
その指の先を辿っていく。
「・・・・・・あー・・・これか」
セネルの示す先には、ワルターを支えた時についた、彼の血だった。
ちょうど腹部に血の跡ができていて、まるで剣か何かで刺されたような感じ。
そんでもって私が倒れてるもんだから、みんなは私が大怪我したって勘違いしちゃったわけだ。
「大丈夫なのか?」
「クロエまで〜。平気だよ、これ私の血じゃないし」
「ま、まさか返り血・・・?」
「でもないから。―――これはワルターの・・・」
「ワルター?」
ワルターの血だから。
そう言おうとした瞬間、大怪我を負った彼のことを思い出す。
そうだ、まだ治療途中だった。
私はワルターの方に駆け寄る。
「ワルター!」
返事はない。
まだ気を失ったままらしい。
・・・・・・・そんな強く殴ったつもりはないんだけどな。
「空を飛ぶ男・・・か。ワルターというのか?」
「ん?うん。セネル達が来るまで、私たちを守っててくれたの」
「えぇ〜?そいつが?」
信じらんない。
そういう目でワルターを見るノーマ。
他のみんなもそんな目で見ている。
そりゃあね。シャーリィ攫ったし・・・・・・・・
「っそーだ!シャーリィ・・・シャーリィは?」
「私達が来た時には、すでにいなかったが・・・」
「あの少女に聞こうにも、いくら俺達が話しかけても怯えるだけで・・・」
そう言って、ウィルは視線をフェニモールに投げかけた。
フェニモールは貝殻を握り、震えながらこっちを見ている。
それは、セネルたちが陸の民だから?
それとも、他に何か理由が?
私はワルターから離れ、フェニモールの方に一歩近づく。
「フェニモール」
「な、なによ・・・」
「シャーリィはどこ行ったの?」
「・・・・・・・あの子・・・あんたを殴った後、自分がオトリになるって言ってひとりで飛び出して行ったわ・・・」
「・・・・・・・この腹部の痛みって・・・?」
「シャーリィが殴ったからよ」
「やっぱり?」
どーりで腹が痛いわけだ。
それにしても、あの子ものすごい力で殴ったんだな・・・。
アザになってるかも。
痛む腹を押さえながら、そんなことを想像する。
シャーリィ・・・気絶させるんだったら、もっと手加減をしてくれればいいのに・・・。
「オトリに・・・!?いつだ?」
「あんた達が来る・・・ちょっと前」
「急げばまだ間に合うはずだ。クーリッジ、行こう!」
いつの間に仲直りしたのか、クロエがセネルに話しかけている。
ん〜?私のいない間に一体何が・・・?
セネルはクロエの言葉に「ああ・・・」と短く返事をしてから、ワルターに視線を移した。
「モーゼス、頼みがある」
「あァ?」
ワルターを暫く見てから、今度は半裸野郎に視線を移しそう言った。
頼みがあると言ったセネルに対し、ガラの悪い返事。
さっすが半裸野郎!(意味わからない)
・・・・・・・って、
「なんで半裸野郎がセネル達と一緒にいんの?」
「半裸野郎言うのやめえ!!一緒に行動なんかしちょらん。ワイの進む道にこいつらがいるだけじゃ」
「つまり、ひとりで行動するのは寂しいからセネル達の後をついてきたのね?」
「どーしたらそういう結論に至るんじゃ!!」
そう言うと、私は半裸野郎に軽く頭を叩かれた。
「だって名前知らないもん」
「モーすけだよ」
「モーすけね」
「モーゼスじゃ!!」
「はいはい、モーゼスモーゼス」
「なんじゃ・・・そのどーでもよさそうな反応は」
「あの・・・・俺、話続けてもよろしいでしょうか?」
半裸野郎の名前がモーゼスとわかり・・・・ん?知ってたような気も・・・ま、いっか。
モーゼスと私が会話(のようなもの)をしていると、少し控えめにセネルが話しに割って入ってくる。
あまりに控えめに入ってくるもんだから、「どうぞ・・・」とこっちまで控えめな言い方になってしまう。
「そこに倒れている男を、ギートに乗せて運んでくれないか?」
「!」
「ちょっとセネセネ、何考えてんの。前にリッちゃん攫ったやつだよ?」
思いがけないセネルの言葉に、みんな驚いた表情をしている。
私はもともと運んでいくつもりだったし(こんな所に放っておけないし)。
セネルがこう言い出してくれて、正直嬉しかった。
どうして運ぶ気になったのかは、わからなかったけど。
「わかってる。だけど・・・。俺達がこいつを助けることを、シャーリィはきっと望んでいるはずだ」
「だから少女貝殻を託して、俺たちをここへ導いたと?」
「ケッ。何でワイがそがあなことせにゃいけんのじゃ。ワレは勝手に盛り上がっとりゃええ。ワイにゃ関係なあで」
「ひとでなし!」
「さいってえ!」
「「この、バカ山賊!」」
「ハモんな!」
こんな会話を聞きつつも、私はワルターに近寄り治療を再開する。
少しでも早く、この傷を治してあげたいから。
「キュア」
光が傷を包み、少しずつ治していく。
それでもやっぱり、完全には治りきらない。
なんだよ。何十回やってると思ってるんだ。この傷め。
さっきから何度も何度も上級晶術を唱えていたため、疲労感が身体を襲う。
いやいや。こんな疲れ、ワルターの傷に比べれば。
「キュアキュアキュアキュアキュア」
「おい、呪いの呪文唱えてないでさっさと行くぞ」
「だから呪いの呪文じゃないから!」
傷もあともう少しで完全に治せる。
私は最後の力を振り絞り、連続で唱えてみる。
あとちょっと・・・
あとちょっとのところで、セネルに止められ集中が途切れてしまった。
彼の方を振り返ると、みんな入り口の方で私を待っている。
「ごめんごめん」
「それじゃあウィル、ワルターをギートに乗せるのを手伝ってくれ」
「わかった」
セネルの頼みにウィルは頷き、ふたりでワルターを持ち上げる。
私が治療している間に、モーゼスがワルターを運ぶ事を了承してくれたらしい。
「知るか!」みたいに冷たいこと言ったくせに、いいやつじゃん。
意外にいい奴だったらしいモーゼスに近寄り、私は笑顔を向けた。
「モーゼス」
「やっとワイの名前覚えたんか」
「覚えましたよー。モーゼス、ありがと」
「?何がじゃ?」
「ワルターをギートで運んでくれて・・・ん?この場合モーゼスよりギートにお礼を言うべき?」
「何でじゃ!」
本気でギートの方にお礼を言おうとする私に、モーゼスがツッコんだ。
そんなモーゼスに「冗談」と軽く返す。
ついでに笑顔を向けておきつつ、私はワルターの方に視線を向ける。
向こうはギートにワルターを乗せ終わっていて、あとはこの毛細水道から出るだけとなった。
+++++++
毛細水道入り口でシャーリィを見つけたものの、メラニィに連れて行かれてしまう。
その後メラニィが残した魔物に足止めされ、私達はシャーリィを見失ってしまった。
入り口を出て辺りを見回すが、もうシャーリィの姿は見えない。
「あーっ、もういない!」
「シャーリィはどこに連れて行かれたんだろうか?」
「あっちじゃない?」
「適当に言うな」
適当な方角を指差しそう言ったら、セネルに冷たくツッコまれてしまった。
シャーリィを三度・・・じゃない。四回も攫われてしまい、正直参ってるんだろう。
ああ、また「シャーリィィィイ!」とか言って泣き出したらどうしよう。
チラッとセネルを見るが、その様子はない。
シスコン治ったのかな?
「・・・・・・・・なんだよ」
「まーたセネルが泣き出すかと思って」
「泣くか」
「今まで散々泣いてたでしょうよ」
説得力に欠けますな。
そう付け足すと、セネルは小さく「・・・・・そうだな」と呟いた。
本当に元気がないらしい。
「よしよし」
「・・・・・・・・何してんだよ」
元気を出すために頭を撫でてあげると、セネルは眉間に皺を寄らせ私を見る。
それでも手を退けようとせず、セネルは黙って頭を撫でられた。
「元気出せ!」
「・・・・・・・・・・」
「次こそシャーリィ助け出そうね」
「・・・・・ああ。そうだな」
次こそ。
私が笑みを向ければ、セネルもそれに答えてくれる。
セネルは私の頭を撫でてから、フェニモールに声をかけられたので彼女の方へと行った。
フェニモールは貝殻を手渡しながら、何か言っている。
それを横目で見ながら、私はワルターの方へ歩いた。
地面に置かれた彼の横にしゃがみ、傷口に手を当てる。
そして再び治療を始めようと、精神を集中させた。
もう特に派手な傷はなく、あと少しで完全に治りそう。
私は傷の具合を見て、キュアではなくヒールを唱えた。
これぐらいならヒールで充分治るだろうし。
それにしても、本当に疲れた。
治療術を連続で唱えるなんて、初めてだし。
ああ・・・萌えが足りなくて力が出ない。
ジェイ・・・ジェイをぎゅーっと抱きしめて萌えの充電しなくては。
「―――あ、ワルター、目ぇ覚めた?」
「・・・・・・・・・・・・」
治療を続けていると、ワルターが起きた、
彼はうっすらと目を開け、周りをぼーっと眺めている。
声をかけてみると、周りを眺めていた視線は、スッと私の方へと移動した。
私は小さく「おはよ」と言っておく。
「大丈夫?」
「・・・・・ここはどこだ」
「毛細水道の外」
「・・・・・メルネスは?」
「・・・・・シャーリィは、ヴァーツラフ軍に捕まっちゃった・・・」
「!なんだと!?」
シャーリィが捕まったことを告げると、ワルターはバッと起き上がる。
傷は完璧に治した後だったので、傷口が開く事はなかった。
ワルターは周りを見回し、シャーリィがいないことを確認すると小さく舌打ちをする。
そして背中に羽を生やすと、フェニモールに近づき、彼女を周りに黒い球体に包み込む。
まるでシャーリィを攫ったときのように。
フェニモールを浮かせて自分の隣へ移動させると、どこかへ行こうとするワルター。
「ちょ、回復してやったんだからお礼ぐらい言え!!この野郎!!」
しかし、ワルターは私の方をチラッと見ると、そのままフェニモールを連れてどこかに行ってしまった。
その姿が見えなくなるまで叫んだが、結局お礼は言ってもらえないまま。
それどころかこっちを見ようともしない。
あーんな深い傷を治してやったのに、礼の一言もないなんて!
「ムッカつく!!」
「キュッ!?」
ワルターに対して叫ぶと、怯えたような可愛らしい悲鳴が聞こえた。
驚いて声のした方を向けば、そこにはモフモフな彼の姿。
赤い頭巾のようなものを被っているのは・・・
「キュッちんじゃん!」
「キュッポ、シャーリィがどこに行ったかしらないか?」
「ジェイの話だと『雪花の遺跡』に向かったらしいキュ」
「!ジェイ?そーだ!ジェイは!?」
キュッポが「ジェイ」と言った瞬間、私は思わず周りを見渡す。
当たり前だけど、ジェイの姿は見当たらなかった。
わかりきってたことだったのに、溜息が出るのを止められない。
そんな私を心配するかのように、キュッポが私を覗き込む。
「雪花の遺跡か・・・ヴァーツラフの本隊がいるところだな」
私がキュッポに心配されている横で、ウィルが顎に手を当てながら呟いた。
そういえばジェイがそんなことを言っていた気がする。
それじゃあ次の目的地は雪花の遺跡だね。
とノーマがまとめ、私達は雪花の遺跡へと向かおうと進みだす。
・・・・・と、その時
「ワイも一緒に行く」
今まで話の成り行きを見ていたらしいモーゼスが、突然こう言った。
モーゼスの意外な言葉にみんな足を止め、彼の方を向く。
ウィルは怪訝そうな顔をしながらモーゼスに問いただす。
「・・・一緒に行くとは、どういう風の吹き回しだ?」
「ヴァーツラフのやり方が気に入らんのじゃ。じゃからぶっ潰す。」
そんだけじゃ。
そう言ってモーゼスは言葉を終わらせた。
シンプルな理由ですな。
「私は賛成」
私がそう言いながらモーゼスに近づくと、みんな驚いた表情をする。
隣にいるモーゼスは笑顔だったけど。
「話がわかるのう!」と言われ、肩を組まれた。
「だって、モーゼスがいたら、もしもの時盾にできるでしょ?」
「そんな理由なんかい!」
「あ〜、それはいいアイディアだね!」
「でしょ?」
「シャボン娘まで何言い出すんじゃ!?」
私とノーマがモーゼスの使い道について話し合いを始めると、モーゼスは大声でツッコむ。
あはは、嫌だなぁ。冗談だよ冗談。
モーゼスは気を取り直すように咳払いをし、セネルの方へと一歩歩み寄る。
「ワレとは色々あったが、一時休戦しちゃる。同じ目的を持つ同士、手を組むとしようかの・・・・・」
「ふざけんじゃねぇっ!!」
「ぶほぉっ!?」
握手を求めるように手を出すモーゼスを、問答無用でセネルが殴り飛ばす。
その威力は物凄く、180センチはあろうモーゼスの巨体を軽く5メートルぐらいぶっ飛んだ。
モーゼスがこっちに飛んできたので、私とノーマは慌てて避ける。
間一髪。ギリギリセーフ。
あと一秒反応が遅かったら巻き込まれていたかもしれない。
「ちょっとセネル!私が危ないでしょうが!!」
「あ、すまない」
「ワイの心配はしないんかい!?」
自分を気遣う言葉を誰も発しないと、モーゼスはしくしくと泣くフリをする。
いい大人が泣きまねはやめなさい。
非常に気持ち悪いから。
そんな泣きまねも相手にしないでいると、モーゼスは泣きまねを止めてセネルを睨む。
「セの字!いきなり何すんじゃ!?」
「うるさい!綺麗にまとめようったってそうはいかないからな。元はといえばお前がシャーリィを攫ったのが全ての発端なんだ!」
ドゴッ
「そ、そんぐらい水に流さんか・・・」
「ふざけんじゃねぇ!!テメェ反省の色なしか!?」
バキッ
「わ、悪かった・・・!ワイが悪かったから、もうやめ・・・」
「るわけねーだろ!!俺のシャーリィを返せぇぇえええ!!!!」
ゴキャッ
「うぎゃーーーーーーー!?」
セネルにボッコボコにされるモーゼス。
泣きながらモーゼスを殴るセネル。
ああ・・・今回は泣くだけじゃなくて、モーゼスへの怒りもプラスされたんだね。
自分の妹を「俺のシャーリィ」と言ってしまう彼は、どこまでシスコンなのか。
そんなことを考えながら、私達は黙ってその場を眺めていた。
++++++++
「クーリッジ」
「?」
セネルにボコられ、のびているモーゼス。
それをキュッポと一緒に眺めていると、後ろの方で何やら怪しい雰囲気が。
仲間割れをしていたはずのセネルとクロエの周りに、ピンクのオーラが微かに見えている。
「毛細水道の中では、世話に・・・」
「おんや?雪解けですか〜?」
少しモジモジしながらお礼を言おうとするクロエ。
それを見てノーマはニヤニヤとしながらふたりに近づく。
クロエは「そんなんじゃ・・・!」と言い、セネルに関しては何も反応がない。
呆れ顔でノーマを見ているだけだった。
そんな彼らに近づき、私も混ざってみる。
「なになに〜?セネルとクロエ、毛細水道で何かあったの?」
「ちょ・・・まで!!」
「そうみたいだよ〜?いつの間にか仲直りしてるし」
「「してない!」」
「おやおや?おふたりさん息ピッタリですな〜?」
「毛細水道でムフフなことしてたんじゃないのー?」
自分達をからかう私とノーマに、必死で反論するクロエ。
普段は見れない、慌てて顔を少し赤く染める彼女が可愛らしくて、思わずからかってしまう。
セネルはもう諦めたのか、それともどうでもよくなったのか。
何も言ってこないで、ただ溜息をついていた。
「ヨォォシ!行っちゃるかあ!」
「!」
いつの間に復活したのか、元気よく大声で言うモーゼス。
いきなりの大声にキュッポは驚き、尻餅をついている。
ああ可愛い!!
さっき、さんざんセネルにボコボコにされたにもかかわらず、私達についてくる気満々な彼。
そんなモーゼスを見て、みんな呆れている。
「モーすけ・・・あくまでついて来る気なんだね」
「そんなに私の盾になりたいなんて」
「そんなこと言っちょらんじゃろ!!」
もう何を言っても、こいつはついてくる気だ。
ま、私は別にいいけどね。
仲間多い方が戦闘楽だし。
特に、モーゼスのようなお気楽な感じな人がいると、こっちも楽しいし。
みんなはもう諦め、何も言ってこない。
セネルはまだ不満そうだけど、こっちも何も言ってこなかった。
「モーゼス、よろしくね」
「おう!」
こうして、モーゼスが私達の新たな仲間になった。
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や、やっと二章終わった・・・!!
早くジェイ出て来い出て来い出て来い出てk(略)
つーかモーゼスの口調全然わかんねぇ。