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「隠し小部屋・・・・・・きっとここね」
「うっわー、広いな」





ワルターに教えてもらった場所に着き、私達は一息ついていた。
隠し小部屋と言われたこの場所は、「小部屋」と言うにはふさわしくないほどの大きな空間。

小部屋がある位置は・・・・明らかにって感じの場所だったけど、扉の開け方はちょっとコツがいるのでまあ安心だろう。


私は床に寝転び、まったりとワルターを待つことにした。





「・・・・・・・・・ねぇ」
「・・・・・んん〜?」
あんたじゃないわよ。・・・・・・・シャーリィ」





呼ばれたので返事をすれば、「違う」と冷たく言われてしまった。
名前も呼ばずに呼びかけるのが悪いんじゃんよー。

そう思いつつ声には出さない。
フェニモールとシャーリィの間の雰囲気が、なんともいえない感じだったから。


寝転がってるのもな・・・と思い、私はゆっくりと起き上がった。





「・・・・・・・・・・あんたがメルネス様っていうの、本当?」
「・・・・・・・・・」
「本当なのね?」
「・・・・・フェニモール・・・その・・・」





シャーリィの反応を見て、フェニモールは俯く。





「・・・・・・・・メルネス様が生まれたって噂を聞いて、ずっと、どんな人なんだろうって思ってた。
囚われの身になってからは、ますますメルネス様の存在を信じるようになった。
あたし達をお助けください、水の民をお導きください。そればかりを、ずっと、ずっと念じてきた」





震える声で、小さく、でも力強く言うフェニモール。
小さな声でも、この静かなこの場所では、聞こえるのには充分の大きさで。

シャーリィは黙ってフェニモールの言葉を聞いていた。





「それなのに、あんたはっ!」





俯いていた顔を上げ、シャーリィをキッと睨む。





「あたしの仲間が次々殺されているときに、あんたは何をしていた!?
陸の民と暮らしていただ?お兄ちゃんだ?ふざけるなっ!」





怒りを抑えられず、声を張り上げるフェニモール。
それでもシャーリィはただ黙り、辛そうに聞いていた。





「あんたがグズグズしていたせいで、こっちは仲間を全員殺されたんだ!
メルネスならメルネスらしく、さっさと責任果たしなさいよ!」

「よせ」






ただ見ていることしかできなくて。
話についていけなくて。
どうしたらいいのか、わからない。


そんな時だった。


凛とした声が、フェニモールを止めた。





「ワルターさん!?大丈夫ですか?」
「ワルター・・・!」





いつの間に来たのか、その場には傷だらけのワルターの姿。
力なくこっちへと歩くワルターに、思わず駆け寄る。

倒れそうになる彼の身体を支えると、服に血がベットリとついた。
そんなのは気にならない。
それより、この傷・・・っ





「ちょ、酷い傷じゃない!」
「これしきの傷、どうということはない」
「どこがこれしきの傷なんですか!動けるのが不思議なくらいです!」





大丈夫だというワルターに、声を震えさせ言うフェニモール。





「問題ない。早くここを脱出・・・・グッ」





時間がないのか、急かすように言うワルター。
しかし、傷が酷すぎるため足に力が入らないらしい。
辛そうに声を上げる。

私はワルターを支えるのを止め、床にそっと寝かす。
そして傷口に手を当てる。





「何をする気だ・・・」
「治す気」
「!・・・・陸の民の助けなど・・・・っ」
うっさい!黙れ!!





ごちゃごちゃとうるさいワルターを黙らせ、私は精神を落ち着かせる。





「ヒール」





私がそう言うと、ワルターの傷に光が集まった。
その光は傷を癒し、流れていた血を止める。
少し傷は塞がったが、深すぎてヒールじゃ間に合わない。

それなら上級のやつを使うまで。





「キュア」





さっきより強い光が傷を包む。
しかし、完全に傷は塞がらない。





「キュ・・・・・」
「止めろ」
「嫌だ。キュア」
「・・・・・・・・・・なぜ、助けようとする」





再び治療を始める私に、ワルターは呟くように言った。
その視線は私の方に向いておらず、どこか遠くを見つめている。

どうして助けるか?





「・・・水の民だか陸の民だか知らないないけどさ」





何か因縁でもあるかもしれないけど





「目の前に重症の人がいる」
「・・・・・・・・・・」
「私たちを守って、戦って・・・。そして傷を負った人がいる」
「別にお前を守ったわけじゃない」
「知ってるけど・・・。つまり、そんな人を目の前にして放っておけないだけ」





一度で治らないのなら、何度でもやればいい。
この傷が塞がるまで、治し続ければいい。


何度でも

何度でも





「・・・・・・・キュア」





何回目だろうか。
もう十何回かはやっている気がする。

中々治らない傷に対し、少しイライラしてくる。





キュアキュアキュアキュアキュア
「ちょ・・・さん、連続して言うと呪いの呪文言ってるみたいですよ





こうなったらヤケだ。

そう思って連続で唱えてみた。
連続で「キュア」と言うと、シャーリィの言う通りちょっと不気味。
最初心配そうに見ていたフェニモールも、少し顔を引き攣らせている。





・・・・・・・おい。人を呪うな
「呪ってないってば。・・・・・あー、ちくしょー。お前傷深すぎだっつーの!」
「逆ギレされてもな・・・」
「っあーーーもう!こんなもん唾つけときゃ治る!!
「治らないわよ!」





唾をワルターにつけようとすると、フェニモールがツッコミを入れてくる。
おっとナイスノリツッコミ。

「ナーイス☆」
そうフェニモールに言おうとした時





「あの男が消えたのは、このあたりだ!徹底的に探せ!」

「!」





扉の向こうで、敵の声が聞こえた。
それと同時にたくさんの足音も。





「奴らが追ってきたか・・・・・うっ」





敵の声が聞こえたかと思えば、ワルターがガバッと起き上がる。
しかし傷が痛んだのか、再びうずくまった。

この様子じゃあ、今すぐには動けないだろう。


そのことは本人もわかってるはずだ。
なのに傷の痛みを気にせず立ち上がろうとする彼。





「ちょっと・・・まだ動いちゃダメだってば!」
「敵がそこまで来ている・・・。ここも直見つかるだろう。早く・・・」





そう言うと、今度は立ち上がろうとする。





ダメだって言ってるだろうが!!
「!?」





いう事をきかず、動こうとしやがるワルターを思いっきりぶん殴る。

彼はゆっくりと倒れ、気を失った。





何してるのよーーー!?」(汗
「だって、このままだと動こうとするじゃない。せっかく塞いだ傷が開くでしょ」
今ので絶対開いちゃったわよ!
さんの行動は正しいと思います」
「でしょ?」
「正気かあんたら!?」





いきなりワルターを殴った私を「信じられない!」という目で見るフェニモール。
ちょっと、そんな大声出したら敵に気づかれるだろ。

笑顔で「ねー」と言い合う私とシャーリィを見て、頭を抱え込む彼女。
信じられない・・・。
そう小さく呟きながら。





トントン





「!」





扉を叩く音がする。
フェニモールとシャーリィは身体をビクつかせ、扉を見つめた。

敵は、すぐそこにいる。



フェニモールとシャーリィは戦えない。
ワルターは気絶してしまっている(お前のせいだよ)
・・・・・・あとは、私だけ。





「シャーリィ、フェニモール。私が敵の目を引き付けるから・・・・・・って、それ・・・?」
「!・・・・・毛皮に貰った貝殻・・・・」
「毛皮・・・?」





私がシャーリィの方へ振り向くと、彼女の手に握られた貝殻が突然光りだす。

「毛皮に貰った・・・」なんて言うもんだから、フェニモールは怪訝そうな顔をしている。
毛皮じゃないよ。ピッポだよ。





「・・・・・・・・・こうなったら」





光る貝殻を見つめ、暫く黙っていたシャーリィが小さく呟いた。
そして何かを決心したように、キッと前を見据える。

まさか。





「私がここから出て、彼らの目をひきつけるわ。彼らの目的は私だからきっとうまくいくと思う」
「そんな・・・・」
「あんたにそんなことできるわけない!口先だけでカッコつけないでよ!」
「ちょっと、ここは止めるところでしょうが!」
「・・・・・」





フェニモールの言葉に俯くシャーリィ。
しかしそのあとフェニモールに視線を戻し、光り輝く貝殻を彼女に渡す。

手渡された貝殻を見つめ、フェニモールは「光った・・・」と小さく呟いた。





「貝殻に向かって、『助けて』って念じるの。いい?ずっとだよ」
「ちょっと!」
「シャーリィ!」





そう言うとシャーリィは出口に向かう。
それを引き止めるフェニモール。

呼び止められたシャーリィは、こっちを振り返らず立ち止まった。





「シャーリィ、オトリなら私がなるから・・・。シャーリィはここでセネルを待ってて」
「そんなことできません。さんはフェニモールとここに・・・・」
「でも・・・・・・・・」
さんを危険な目に合わせるわけにはいきません」
「大丈夫だって!」
・・・・・・・ごちゃごちゃ言ってねぇで、いう事きけぇぇええ!!!!
「!」





シャーリィがそう叫んだ瞬間、腹部に衝撃が伝わる。

何が起こったのかわからず、シャーリィを見つめる。





「・・・・・・・・ごめんなさい」





辛そうにそう言ったシャーリィを見たのを最後に、私は意識を手放した。






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要するに、主人公がワルターにしたことをシャーリィが主人公にやっちゃったわけなんです。