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「私もジェイと一緒に行く」
「断ります」
もう何回も繰り返すこの会話を、みんなは呆れながら見守っていた。
「せっかくジェイが協力してくれるのに、なんでわざわざ別行動しなきゃなの」
「準備があると言ったでしょう」
「そんな準備、ウィルにやらせなさいよー」
「俺か!?」
いきなり話の方向が自分に向き、ウィルは驚いたように自分を指差していた。
その驚いた際にハティにやられた傷が痛んだのか、小さく「うっ」という声が漏れる。
そんなウィルに「大丈夫〜?」と言っているノーマを横目で見つつ、私は再びジェイに視線を合わせた。
ジェイの家に着き、ヴァーツラフ軍が何処に向かったのか。
そしてシャーリィは無事なのかを教えてもらった。
普段はひとつの情報しか提供しないらしいのに、今回は特別だと言ってくれるジェイは素敵。
そして話は進み、なんだか成り行きでジェイが協力してくれることになって。
これでジェイと行動できる!なんて喜んだのもつかの間。
準備があるからと、先に行くと彼は言い出したもんだから私は大反論。
ジェイと一緒に行く事を諦めようとしない私を見てから、ジェイは溜息を漏らす。
「・・・・・・・・・・では、こういうのはどうでしょうか」
「・・・・・・・・・・どういうの?」
「さんが、ちゃんと皆さんと一緒に行けたら」
「ジェイと一緒がいい」
「話は最後まで聞いてください」
「・・・・・・・・・行けたら?」
「ご褒美をあげます」
ご褒美。
そう言ってジェイは微笑んだ。
ご褒美・・・・?
ジェイからの・・・・・・・ご褒美・・・っ!?
「どうです?」
「その提案素晴らしいです!!」
彼の提案に即行で答える私にジェイは満足そうに微笑み、みんなは呆れていた。
「ではそういうことで」
「で、ご褒美って何?」
「それは後のお楽しみですよ」
そう言ってジェイは家を出た。
その後をキュッポたちが追いかける。
ご褒美・・・・・ご褒美・・・!!
「ちょっとクロエ!ご褒美だって!ご褒美!!」
「あ、ああ・・・・・・よかったな・・・」(汗
ジェイが言ったご褒美を楽しみに、私は元気よく家を飛び出した。
さっさと毛細水道へ行こうとすると、何故かみんなは家の前で立ち止まる。
「ハリエットを頼む」
「ハリエットのことはピッポに任せるキュ。街まで無事に送り届けるキュ」
「世話をかける」
「何の。少女の凍てついた心を解きほぐすのも、詩人の仕事だキュ」
どうしたのかと振り返れば、ピッポとウィルが玄関で会話をしていた。
ピッポはハープ鳴らせそう言うと、家の中へと消える。
2人の会話の内容はハティのこと。
どうやらハティはピッポに任せられたらしい。
「ピッポ、詩人だったのね」
「そりゃ〜、背中にハープみたいのつけてるしね〜」
「それが詩人だと判断するポイントなのか・・・?」
どちらかといえば、音楽家では・・・?
そうクロエが呟いていたときだった。
玄関の方を眺めていたウィルが、こっちの方に振り返える。
「セネル」
「なんだ」
「ハリエットのこと、礼を言う」
「別に・・・・・」
「ハリエットが世話になったことに免じ、この前のことは水に流そう。ただし、今回だけだぞ」
この前のことというのは、シャーリィを連れて勝手に離れたことなのだろうか。
セネルはウィルの言葉に「わかったよ」と小さく答える。
ウィルは許してくれた。
だけど・・・
「・・・・・・私はお前を信用したわけではない。それを忘れるな」
セネルの方を向き、クロエは冷たくそう言った。
「・・・・・クー、まだ怒ってるんだ・・・」
「結構根に持つタイプなのね」
クロエに対しセネルまで背を向けるのを見て、私とノーマは後ろでそう呟く。
これから一緒にシャーリィを助け出すっていうのに、こんなままでいいのだろうか。
少し不安を抱きつつ、私達は毛細水道へと向かった。
+++++++
「ジェーーイーーー!!!!」
毛細水道入り口で待っていたジェイに向かって、私は駆け寄る。
そしてそのまま抱きつこうとするが、ジェイに避けられそれは叶わなかった。
「ジェイ!私ちゃんと来た!」
だからご褒美!
そういう意味を込めて、私はジェイの前に手を出した。
ご褒美ご褒美!
そんな私にジェイは笑みを向ける。
「そうですね。偉いですねぇ。よく出来ました」
「うへへ!」
「〜、それバカにされてるよ〜」
よしよしと頭を撫でるジェイ。
うっへへ!ジェイになでなでしてもらっちゃったよ!
ジェイに頭を撫でてもらって幸せ気分な私には、ノーマのツッコミは耳に入ってこなかった。
「そうそう、ご褒美あげないといけませんね」
「待ってました!」
「さん、きっと喜ぶキュ!」
「キュッポ、何か知ってるの?」
ポケットをごそごそと探るジェイを見ながら、私はキュッポに訊ねる。
その質問に、キュッポは「お楽しみだキュー!」と可愛らしく返事した。
キュッポにそう言われ、私は更にご褒美が楽しみになる。
「はい、ご褒美です」
ご褒美を今か今かと待ちわびる私に、ジェイはポンと何かを手渡した。
その手渡されたものを見ると・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・ホタテ・・・」
「はい」
「ホタテだキュ!」
「ホタテだな」
「うむ」
「そうだな・・・」
手渡されたものは、大きめなホタテ一つ。
「「ホタテかよ!!」」
私とノーマのツッコミが重なった。
「何か不満でも?」
「大有りじゃーーー!!!!ご褒美がホタテって!ホタテって何!?」
「モフモフ族のみんなは喜ぶんですけどね」
「そりゃあラッコだもんね〜」
「しかも!これポケットから出したよね!?ジェイ、ポケットにこのホタテ入れてたの!?」
「常備品です」
「まじでかーーーー!!!!」
意外な返答に驚いていると、「冗談ですよ」とジェイは小馬鹿にした笑いを含みながら言った。
こんなのに騙されるなんて、ほんと馬鹿ですね。
そう付け足して。
こっの、憎たらしいほどに可愛いやつめ!(おい)
ジェイの小馬鹿にしたような笑いに対してのムカつき。
でもやっぱりその笑みもたまらないことに対しての萌えからの震えが、ホタテを握る手に伝わった。
「・・・・・・・・・さん、嬉しくないキュ?」
ホタテを受け取った私の反応を見て、キュッポが悲しそうに私を見つめそう言う。
その瞳はうるうるとしていて、いつもキリッとしていた眉まで悲しそうに下がっていて。
「・・・うっ・・・・そ、それは・・・」
嬉しくはない、けど・・・・けど・・・・・っ!
でも、キュッポの顔を見たらどうしてもそう言えない。
思わず言葉に詰ってしまう。
「・・・・・・・うっ、嬉しいです」
「!良かったキュー!」
「キュキュキュー!」
キュッポの視線に耐えられず、私は顔を引き攣らせつつそう答えた。
私の返答に満面の笑みを向けるモフモフたち。
多少心が痛みつつ、愛くるしい彼らを見て、まぁいいかと思ってしまう。
どんなものだろうと、ジェイがくれたものだし。
「ジェイ」
「なんですか?」
「ありがと」
暫くモフモフを眺めたあと、ジェイの方へ振り返り礼を言う。
さっきとは違うことを言う私に、ジェイは驚いたように目を見開いた。
その驚き顔も、す・て・き☆(キモイよ)
「・・・・・・どうしたんです?急に態度を変えて」
「たとえホタテでも、ジェイがくれたものには変わりないって前向きに考えることにしたの」
「・・・・・・・・・・・・・」
「だから一生肌身離さず持ってるわ・・・・・っ!」
「腐りますよ」
生なんですから。
そう言って、ジェイは溜息を漏らした。
「それじゃあ小腹も減ってることだし、今食べる。ジェイ、どうやって食べるの?」
「・・・・・・・・かしてください」
貝殻に入ったままのホタテを食べた事のない私。
どうやって食ったらいいのやら。
そう思って訊ねると、ジェイは片手を差し出した。
「・・・・・・・・・そろそろ、いいか?」
「ん?」
「ああ、すみません」
ジェイに貝を接いでもらい、もぐもぐとホタテを食べていると遠慮がちにクロエがジェイに話しかけた。
クロエの言葉の意味を理解したのか、ジェイは一言謝りみんなの方へ歩いていく。
私もホタテを食べながら、トコトコとジェイの後をついていく。
「では、作戦の方をお伝えします。初めに、ウィルさんとノーマさん」
「うむ」
「ほ〜い」
「僕が合図をしたら、ありったけのブレスを隊列の先頭にぶちかましてください。
敵を足止めし、注意を前方に集中させるためです」
「わかった」「まっかせて!」
「ウィルさん達が行動を開始したら、間髪いれずキュッポたちも動いて」
「あっちに潜んでる仲間達と、一斉に大声を上げればいいんだキュ?」
「任せるキュ!キュキュキュ!」
ジェイに言われ、元気よく返事をするキュッポとポッポ。
可愛いったらありゃしない!
「そうしたら、いよいよ仕上げですね。セネルさん、クロエさん。
おふたりには、あらかじめあの物陰に隠れていてもらいます。僕がシャーリィさんの近くに向かって煙幕玉を投げつけます。
おふたりはそれを合図に飛び出して、シャーリィさんの身柄を押さえてください。その後は毛細水道に入り、中の非常通路を使って逃走してください」
「わかった」「了解した」
待機する場所を指差し、ジェイはセネルとクロエに言った。
ふたりとも返事はしたものの、お互いの目を見ようとしない。
まだ仲間割れ中らしい。さっさと仲直りしてしまえばいいのに。
そんなセネルとクロエの様子を見て、ジェイは溜息をついた。
「本当に大丈夫ですか?不安だなあ。言っておくけど、おふたりの連携が成功の鍵を握ってるんですからね」
「・・・・・・・・・・・あのさ」
「なんです?」
「私は?」
溜息をつくジェイの肩をたたき、こっちを向かせる。
そして、最も気になったことを訊ねた。
私の役割がない。
そのことにみんな気づかなかったのか、「そういえば・・・」なんて言っている。
この白状者!
「決まってないんですよ」
「・・・・・・・・・・・は?」
「決まってないって、どーゆーこと?」
意外なジェイの返答に、私は間抜けな声を出してしまう。
そんな私の変わりに、ノーマがジェイへと訊ねてくれた。
ノーマの質問に、ジェイは腕を組み答える。
「今回の作戦は、皆さんの戦闘能力をふまえて考えたものです」
「ふんふん?」
「ブレス系のウィルさんとノーマさんにはサポート役をしてもらいますし」
「うむ」
「ふんふん」
「アーツ系のセネルさんとクロエさんにはシャーリィさんの奪還をしてもらいます」
「ああ」
「わかってる」
「・・・・・・・・・・・・で、問題があなた」
「問題って・・・」
ジェイはそう言うと、私の方に視線を投げる。
「アーツ系なんですか?ブレス系なんですか?」
「え?」
「それで役割が決まるんですよ。どっちなんですか?」
わからない、ということはないでしょう?
そう目で訴えてくる。
そ、そんなこと言われても・・・・・・。
どっちでもないんですが(汗)
「じ、ジェイは?」
「アーツ系です」
「それじゃあ私もアーツ系で」
「それじゃあって何ですか」
いかにも「今決めました!」な私の言葉に、ジェイは眉間に皺を寄せた。
ダメか・・・。
それじゃあ
「んじゃあアーレス系(アーツ系+ブレス系)で」
「勝手に変なの作らないでください」
これもダメだった。
どうしようかな。言っちゃおうかな・・・・・・ジェイだし(どういう理由だ)
でも、セネルにほいほい教えるもんじゃない!って言われたしな〜
「・・・・・・・・どうしよう?セネル」
「なんで俺に聞くんだよ」
悩み、悩んだ末に、セネルの方に歩み寄って助けを求める。
その際に、ちょっと可愛らしく服をちょんと握るのがポイント。
・・・・・と思ったけど、セネルの服はピッチリしていて握れない。
私が助けを求めると、セネルは溜息混じりにそう言った。
「だって、すべての権限はシスコン隊長にあるから・・・」
「シスコン言うな!!」
「だからー、どうしよう?言ってもいいですかー?」
「だから、なんで俺に・・・・・」
「前、ノーマに教えようとしたらセネルが止めたでしょ?だから今回もダメだ!って言われるのかと」
私がそう言うと、セネルは「ああ・・・」と呟く。
今ので思い出したらしい。
私達の会話を見守っているジェイは、眉間に皺を寄らせ「わけがわからない」という顔をしている。
「なんの話をしてるんですか?あの人達」
「ああ・・・それは・・・」
「ん〜、言ってもいいのかな〜?」
「・・・・・・・・?」
ジェイの質問に、困るクロエとノーマ。
言ってもいいものか?とこっちをチラチラ見ている。
ただ、アーツ系かブレス系かを聞いただけなのに、なかなか返事が返ってこないのに痺れを切らしたのか、ジェイは「もういいですよ」と言う。
「本当はここでパッと決める予定でしたが、もういいです」
「いいの?・・・・・・・・・・・・・んじゃあ、私の役割は・・・」
「ないです」
「ないの!?」
「ですから、僕の後ろでも横にでもいてください」
「・・・・・!」
僕の後ろでも横にでもいてください。
つまり
僕の近くにいてください。
「よっし!気合入れちゃうわよ!」
「そんなことに気合入れなくて結構です」
「よかったね〜、!役割がないおかげでジェージェーに引っ付いていられて」
「うん!」(超笑顔)
「・・・・・・・・・・・」(すごく嫌そうな顔)
こうして役割も決まり、あとはヴァーツラフ軍を待つだけになった。
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ヴァーツラフ軍来るの遅い・・・。
相変わらずジェイとの会話だけ長くてすみません・・・