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「モフモフーー!!」
「あっ、ちょっと・・・・・あちこち動き回らないでくださいよ!」
モフモフ族の村につくと、そこにはモフモフしたのがたくさんいた。
思わず興奮してしまい、色んなモフモフたちに触れていく。
腕を組んでいる(強制的に)ジェイは、私が動き回る度に大変そうだった。
だけど、モフモフ族に夢中なのは私だけじゃない。
ノーマやクロエだって、あちこちにいるモフモフを見ては「可愛い」と呟いたり叫んだりしてる。
「だって、あっちにモフモフ。こっちにモフモフしてるから」
「モフモフ族の村なんですから当たり前じゃないですか。だから、さっさと家に行って話を―――」
「おー!モフモフが店開いてる!プリチー☆」
「・・・・・・相変わらず人の話を聞かないひとですねぇ」
少し青筋を立てながら言うジェイ。
怒らせてしまったらしく、私は「ごめん」と短く謝っておいた。
「あー!ハッちいた〜!」
「!」
私と同じようにモフモフに夢中になっていたノーマが、突然大声を出した。
みんな突然の大声に驚いたけど、中でも一番反応が大きかったのはウィル。
ノーマの指差す方を確認し、ハティの元へと駆け寄る。
その姿をみんな不思議そうに見ていた。
どこからどう見たって、ウィルとハティがなんらかの関係があることはわかる。
妹・・・・・・・にしちゃあ離れすぎてる。
それじゃあ娘とか?
いや、ウィルが結婚できるわけがない(失礼)
「・・・・・久しぶりだな・・・」
「違うわ。初めましてでしょ」
ウィルの言葉に、ズバッとハティが返す。
その彼女の言葉はすごく棘棘しい。
ウィルは悲しそうに俯いた。
「わざわざ大陸からやって来たかいがあったわ。ようやく犯罪者の顔が見れたんですもの」
「・・・・・・・・・・」
「犯罪者・・・?」
「ウィル・・・・・・・こんな小さな子に手を出したの?いくらモテないからって・・・犯罪に走ること・・・」
「ハリエットは俺の娘だ」
私の言葉をかき消すぐらいの声で、ウィルがそう言った。
「ハリエットは俺の娘だ」と。
娘・・・・・・・・・・・?
「・・・・・・ハッち、歳は?」
「9歳よ」
「ハリエットは俺が19の時の子供だ」
「「「「えぇぇぇええええぇええーーーーー!!?!?」」」」
あまりに衝撃的な告白に、私達は全員大声を上げた。
私の隣では「うるさい・・・」とジェイが顔を顰めている。
いやいや、今はそんなことを気にしてる暇じゃない。
「ウィルっち、今まだたったの28!?うっそーーー!?」
いち早く立ち直ったノーマが、大声でそう問いただす。
「まじで!?いや、30は絶対いってるでしょ?後半でしょ?」
「驚くのはそこじゃないだろ!」
私とノーマの台詞に、セネルも大声でツッコミを入れる。
クロエはいまだに「28・・・・レイナードが、28・・・?」とブツブツ呟いていた。
ほらね、やっぱり驚くポイントはウィルの歳でしょうよ。
「28?ウソだろ」
という私とノーマの視線を無視しながら、ウィルは再びハティと会話を始める。
その会話はよく聞き取れなくて、内容がよくわかない。
ウィルの歳にまだ多少の疑問を持ちながらも、私達は黙ってウィルたちの会話を見守っていた。
「・・・・・・・・なのに、ママのお葬式にも来ないなんてっ!!」
「・・・・・・・・」
「バカ!あんたなんか大嫌いよ!!」
そう言うと、ハティはダッと走りだした。
ポッポも慌ててその後を追う。
この場には、ただ沈黙が流れた。
「・・・・・・・・・・・こういう空気、苦手」
「でしょうね」
重い、というか気まずい。
そんな空気は、私の性格的に苦手。いや、普通苦手だろうけど。
私の呟きに、ジェイもボソっと呟いた。
「ウィル、早く追いかけろよ!」
暫く黙っていたセネルが、俯き立ちつくしているウィルに一歩近づいてそう言った。
しかしウィルは首を横に振る。
「・・・・・・・・俺は、父親失格だ。俺が追いかける資格はない」
「・・・・・・・・そんなのいるのかな」
「!」
ウィルの言葉に、思わず口出ししてしまった。
そのせいか、みんなの視線が一気に私に集中する。
うわ、言わなきゃよかった。
「・・・・・い、今の聞かなかったことには?」
「できませんねぇ」
「そうですよねぇ・・・・・・」
「―――、続けてくれ」
クロエにそう言われ、私は再びウィルへの言葉を続ける。
「えっと、ほら、親は親じゃん」
「・・・・・・・・・・・」
「確かに、ウィルはハティに父親らしいことが何もできなかったかもしれない」
「・・・・・・・・・・・」
「でも、それはこれからしていけばいいことでしょ?今まで家族として触れ合えなかった分、これから関係を築いていけばいい」
「・・・・・・・・・・!」
「ウィルなりになんか事情があっただろうしさ。ハティだって、いつかきっとわかってくれるわ」
「・・・・・・・・」
「親は親!それだけ。おらっ!さっさと愛しい娘を追いかけて、力の限り抱きしめて来い!これ命令!」
「・・・・・・・・ああ!」
ウィルへの言葉を終え、私は彼の背中をどんっと叩いた。
一瞬驚いたようだけど、ウィルは微笑み、ハティの後を追って走り出した。
「・・・・・・・・・いつものからは想像できない言葉だったな」
ウィルが去り、暫く間が開いた後クロエがそう呟いた。
それに続いてノーマやセネルも。
ちょと待て。
クロエ、何気に失礼じゃないか?
そんなこと言う人でしたっけ?
「うんうん。でも、ウィルっちも元気出たみたいだしさ!一件落着♪」
「・・・・・・・そう?」
「ああ。の言う通りだ。いつかきっと、ハリエットもウィルに心を許す日がくるよな」
セネルはそう言ってウィルが走り去った後を見ていた。
でも、あんな説教みたいに、28のオヤジに語りかける日が来ようとは。
みんなの言葉に「どーも」と返事をし、ずっと私を見ていたらしいジェイに話しかける。
「ずーっと、私を見てたけど・・・・・・どうしたの?」
「いえ、あなたでもそういうことが言えるんだと感心していたんです」
「・・・・・・・・・・・・惚れた?」
「”見直しました”・・・って言うつもりでしたが、やめますね」
「えぇ!?なんで・・・・・」
一体何が原因!?
せっかくジェイに見直される瞬間だったのに・・・・・・!
私はがっくりと肩を落とす。
その際に力が抜けたせいで、ジェイはするりと私の腕から離れていった。
さっきまでのジェイの温もりが残っているものの、今まであったものがなくなると寂しくなる。
「さん、置いていきますよ」
ダブルの悲しみに、立ちつくしたままでいると、前の方からジェイがそう呼びかけた。
・・・・・・・・って、いうか、今・・・・
「なっ、名前!!」
「なんです?」
「い、今名前で呼んだ!?ちょ、もう一回!!」
「なんのことでしょうね?さ、無駄話してないでさっさと行きましょう」
ぼけっとしてたせいか、イマイチ感激度が低い。
もう一度呼ぶように言っても、ジェイは悪戯そうに笑うだけで「なんのことだか」ととぼけるだけ。
でも、確かに聴こえた私の名を呼ぶ彼の声。
名前を呼んでもらえた。
ただそれが嬉しくて、私はジェイへと駆け寄り腕を組む。
嫌そうにしながらも、振り払おうとしない彼。
「うへへ!」
「気持ち悪い笑いを耳元でしないでください。・・・・・・はぁ、せっかく離れたっていうのに、またくっつくんですか」
「だってここにジェイないと寂しいもの」
「・・・・・・・・・・」
「それに、じっと観察が出来ない」
「今すぐ離れてください!」
「うへへへへへ!!」
再び私を離そうとするジェイだったけど、暫くしてから諦めたように溜息をついた。
+++++++
「なにすんのよ!この変態メガネェェエエエェエ!!!!」(怒
「ぶふぅっ!!」
モフモフの村を少し歩き、ジェイの家に着くとそこは地獄絵図だった。
ハティは息を荒くし、拳を握り締めている。
その拳に少し赤いものがついているような気もするけど、あえて何もツッコまない。
そんなハティから数メートル離れた所に、血だらけのボロボロなウィルが転がっていた。
「・・・・・・・・なにがあったんだ?」
その様子を見て暫く経った頃、セネルが小さな声で呟いた。
セネルの声に反応したのか、今まで鬼のような形相でウィルを睨んでいたハティがこっちを振り返る。
それにみんなはビクッと反応した。
「こいつがいきなりハティに抱きついてきたのよ!ああ気持ち悪いったらありゃしない!!」
「・・・・だ、だからって・・・・力の限りぶん殴ることないだろ・・・・・・ぐふっ!?」
「メガネは黙ってなさい!」
途切れ途切れにハティに話しかけるウィルを、彼女は問答無用で蹴りつける。
抱きついた。
それって、さっき私がウィルに言ったこと・・・だよな。
まさか本当に抱きつくとは。
「・・・・・そりゃあ、思春期の女の子が、いきなりメガネオヤジに抱きつかれたら怒るわよね」
「でしょ!?」
「・・・・さっきと言ってること違うぞ」
「しかも、抱きつくのっての提案じゃ・・・」
「何のことかしら!!!!」(汗
口々にバラそうとするのを大声で止めさせる。
私だって悪気があったわけじゃない。
まさか、こんなことになるなんて思わないじゃない!
冷や汗をダラダラと流す私の横で、ジェイがじーっとこっちを見つめる。
「・・・・・・・さんのせいですね」(にっこり)
「ああ!そんな素敵な笑顔で言わないで!襲うぞコラ!」
「おーい、話がそれちゃってるよ〜」
私の提案で、娘にぼこぼこにされてしまったウィル。
ごめん。
ただその一言を、私は心の中で呟いた。
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くだらない話ありすぎ。