08












「あ、セネセネはっけ〜ん」
「ノーマ・・・・・・と
「どーも」





ウィルの家の前を行ったり来たりしていた私とノーマは、ウィルの家からとぼとぼと出てくるセネルに駆け寄った。
いきなりの私達の登場に、多少驚いている様子のセネル。

ノーマは更に一歩近づき、セネルに話しかける。





「セネセネってばいきなりいなくなるんだもん。あたし、結構心配してたり」
「そうなのか?」
「してなかったり?」
「どっちだよ」
「ちょっとセネル、元気ないわよ」
「さては、ウィルっちとクーに冷たくあしらわれたな〜?」





ノーマがそう言うと、セネルは俯き黙った。
図星らしい。

私とノーマは視線を合わし、セネルに駆け寄ってから方に手をポンと乗せる。





「元気だしなって!あたしとはセネセネの見方さ」
「・・・・・・・・・お前らは軽蔑しないのか?」
「まあ、セネセネの行動はどうかと思うけどさ」
「・・・・・・・・は?」
「別に?セネルとシャーリィにだって事情があるんだろうし。責めたりしないよ」
「・・・・・・・・・・・」
「またリッちゃん攫われたんだって?それでさ、協力してあげてもいいよ!その代わり―――」
「う・・・・・・わぁああああああああぁぁっ!!





リッちゃんのブローチを。
そうノーマが言いかけると、今までしょぼん・・・としていたセネルは泣き崩れる。
さすがにシャーリィが3回も攫われると、セネルの泣きようもすごい。





「うわぁぁ!!一度ならず二度までも!!更に三度もシャーリィを攫われてしまったぁぁああ!!!!三回!!三回だよ!?やっぱり俺はお兄ちゃんとして失格なんだ!欠陥品なんだ!!」
「い、いきなりどったの?セネセネ・・・・・・」





初めて見るセネルのこんな姿に、ノーマは一、二歩下がってこう呟いた。
それはそうだろう。
2回目の私でさえ、まだこの豹変振りには驚かされる。

そこら辺にある木に頭突きをしているセネルを見ながら、私は驚いているノーマに説明をする。





「なーんか、昔からシャーリィに何かあるとああなるらしいよ。しかも無意識で」
「うっわー、タチ悪」
「なにが白馬の王子様だ!!俺なんか王冠ないし白タイツでもない!馬にだって乗れないくせになに調子こいたこと言ってんだ俺のバカっ!
「・・・・・・・・で、どうやって止めんの?」
さあ?
「さあ?って!これじゃあリッちゃん助けに行けないよ〜」
「!」





ノーマがシャーリィの名を口にすると、今まで泣き叫んでいたセネルがピタリと泣き止む。





「お前らも手伝ってくれるのか!?」
「へ?だ、だからさっきそう言いかけてたのに、いきなりセネセネってば泣き出すんだもん」
「まじでかよぉ〜〜〜〜!!!ああ、俺はなんていい仲間をもったんだ!神様に感謝だ感謝!!」
「だ〜もう!神様に感謝すんのはいいけどさ、それには条件あるんだけど!」
(無視)それじゃあさっそくシャーリィを助けに行くぜ!」
「無視かコラーーーー!!!!」



+++++++



「―――で、ウィルたちはどうするって言ってた?」
「なんか、不可視のジェイに連絡をとったとか言ってたな」
ジェイ!?
「マジで!?凄いじゃん!」




セネルがようやくもとに戻った頃、私達は作戦会議をしていた。
「ジェイ」という名に反応する私達に、セネルは首を傾げる。





「そのジェイっていうのは、そんなにすごいやつなのか?」
「大物も大物!遺跡船の情報じゃあ右に出るものはいないって噂だよ〜」
「へぇー」
「・・・・・・・・へぇーって、お前知ってるんじゃなかったのか?」
「いや、そんなすごいやつだとは知らなかった」
「?はジェイに会ったことあんの?噂じゃあ、神出鬼没で会ったことある人はいないって・・・」





え?私とセネル、すっごい最初の頃にお会いしたんですけど。


どうやらあの美少年はものすごくすごい奴らしい。
しかも情報屋って!何か響きが素敵じゃないですか!
遺跡船の情報で右に出る者はいない・・・・・・・うっひゃーー!!なんか私の萌えのツボに・・・っ!!

情報屋って言われるからには、やっぱり頭が良さそう。
んでもって、戦闘能力高くないと情報収集なんてできないだろうから、きっとすごく強いのね!
雪のように白い肌に生意気そうな藍色の大きな瞳、とろけそうな声を発する唇に細い手足!
オマケにすごい情報屋で頭がよくて(想像)強いときたもんだ(想像)!!





・・・・・・・・・・も、萌える・・・・・





シャーリィを助け出してから、なーんて思ってたのに結構早くに出会えそうなよ・か・ん☆
これは願ってもないチャンスだわ!





神よ・・・・・・ありがとう・・・っ!
「?」
ー?さっきのセネセネのがうつちゃった?」
「はっ!」





思いっきりトリップしてて、話をまったく聞いていなかった。
そんな様子の私に、セネルとノーマは小首をかしげている。





「えーっと、で、どこに向かうの?」
「噴水広場だよ」
「?なんで?」
「なんでも、そこにジェイからの返事の手紙が来るらしい」
「手紙?ふたりともジェイと文通でもしてんの?」
「話聞いてなかったろお前」「話聞いてなかったでよ
「・・・・・・・・・すんませーん・・・」



+++++++



「―――あっ、ウィルっちたちいた!」
「おお!愛しの美少年も一緒だわ!!」
「ああ・・・あの時の可哀想なやつか」





噴水広場へ行きウィルたちの目的地を聞き出し、私達は船着場へ向かった。
どうやら、彼らの後を追って最終的に手柄を横取りするらしい(激しく違う)。
暫く歩くとウィルたちを見つけ、更に愛しのジェイの姿が!!

私達は見つからないようにこっそりと物陰に潜み、3人の様子を窺う。





「あんのオヤジ・・・・・・私の恋人に馴れ馴れしく話しかけるんじゃねぇ・・・っ!!(ギリギリ)」
「いつの間にお前の恋人になったんだよ・・・」
「出会った瞬間によ!もうふたりは運命の赤いぶっとい糸で結ばれてるのよ!!」
ぶっとい糸って・・・・・・乙女な雰囲気ゼロなんだけど・・・・・」
「むしろ糸じゃないよなそれ」
「ふたりとも細かいことは気にしない!私たちの仲はそれほど強く、切れないって意味よ!」
「いやあいつすっごく嫌がってたろ」
「彼は愛情表現がヘタなだけ。好きな子にはイタズラしちゃうタイプよきっと」
「あー、が変なこと言ってる間に、3人とも船乗っちゃったんだけど〜」





驚いて3人の居た場所に視線を移すと、すでに3人の姿は無かった。





「見失ったーーーー!!セネルのバカッ!」(少女漫画っぽくセネルを殴る)
俺のせい!?
「今からならまだ追いつけるだろうけど・・・船ないしね〜」
「よっしセネセネ!私たちを乗せて泳げ!!」
「セネセネ言うな!まるで下僕のように命令するな!!」
「ちょっとふたりとも〜、どーするか考えようよー!」

「俺の船を使いな!」

「「「え?」」」





ジェイにおいていかれた(ちょっと違う)ことに慌てる私達のもとへ、むさっくるしいオヤジが寄ってきた。





「・・・・・・・・・・誰?」
「ふ・・・名乗るほどの者でもないさ」
「つまり名乗れないと・・・!?きゃーー不審者よ!」
「失礼だろ!」
「い、いいさ・・・・・・。それより、船がないんだろ?俺の船を使え!」
「なーんでそんな親切にしてくれんの?」
「目的はなに?」
「いやいや、これは好意だ」
「セネル、おっさんに好意もたれてるよ・・・」
「が、がんば・・・・」
「どうしてそういう方向にいくんだ!?」
なんかこいつら会話になんねー!





可哀想に・・・。とセネルを見つめる私達と、それにツッコむセネル。
そして会話が進まないことに嫌になったのか、怪しいオヤジは頭を抱えた。
そんな私たちを、船着場にいる人々は不思議そうな目で見ている。





「ま、それは冗談として」
「そうかよ・・・・・・」
「おっさん、あたしたちに船貸してくれるのって本気?」
「ああ。いいからさっさと行ってくれ!」(泣)





もう私達と会話をするのも嫌なのか、オヤジは泣きながら「しっしっ」としている。
なんだ。私達は邪魔者扱いか。

まあそうだとしてもオヤジの好意はありがたい。
私達はオヤジの船を貸してもらうことにし、オヤジに礼を言った。





「さあ!目指すは私の愛しの恋人!」
「よくわからないが、とにかく追いかけるぞ!」
「よーっし!いっけ〜セネセネ!」



+++++++



「あ、前方にウィルっちたち発見!」




かなり後から船を出したはずなのに、あっさりとジェイたちの船に追いついた私達。
確かに!確かに前方にはあのジェイが!!

船の舵を握り、潮風に髪を泳がせている。
あの素敵な黒髪!そして透きとおるような白い肌!んでもって星マークがたくさん描かれたダボダボの服!
どれをとってもあれはまさしくジェイ!





やっと会えたわねハニー!!
うっわ、また会っちゃいましたね変質者のお姉さん」(にっこり)
「この会話だけでの一方通行な恋だと思ってしまうのは、あたしの気のせい?」
「いや気のせいじゃない」
「お前達、なぜここn「あの時みたいに”ア・ナ・タv”って言ってよもう!」
「ははは、いつのことだかわかりませんねぇ」
「俺の台詞を消すな!」
「ふ、ファイトだレイナード!」





おっといけねぇ。
久々のジェイ萌えに舞い上がってしまったわ。

私に台詞を消されたことがすごく悲しいのか、ウィルは涙を流している。
そしてクロエはそれを慰めていた。
苦労するわね。クロエ。





「恥ずかしがらなくてもいいのよ!」
「恥ずかしがってなんかないですよ。嫌がってるだけです
「わかってるわかってる。みんなの前で”アナタ”って言うのは恥ずかしいわよね。でも大丈夫よ!あとでふたりっきりになってあ・げ・る」
「話聞いてますか!?」
「よーっし!セネル!全速力でマイハニーに追いつくのよ!その際に私は跳び移るから!」
「よし・・・・・・っておい!?跳び移る!?」
「皆さん、船のどこかに掴まっててください。全速力で逃げますから





こうして、ジェイとセネルの船の操縦対決が始まった。

ジェイも中々の腕(らしい)けど、セネルもさすがはマリントルーパー。
波の特製をうまく引き出している(らしい)。
あっという間にジェイの船に追いついた。





「よ〜し!セネセネ偉い偉い!」
「俺を犬のように扱うな!」
「さっすがマリントルーパー!・・・・・・・ってハニーがさっき言ってたけど、マリントルーパーって何?セネルの芸名?
「俺に芸名なんかない!」





さっきから気になっていたことをふたりに訊ねると、何故か驚いたようにジェイがこっちを向いた。
どうやら私の声が届いたらしい。





「私たちの会話を聞いてたのね?ハニーってばそんなに私のことを・・・v」
「あなたの声が無駄に大きくて聴こえただけです」
「うひゃーーー!!今言った!”アナタ”ってやっと言った!」
「あ」





素で気づかなかったのか、ジェイははっとした表情をみせる。
その表情がもうたまらん・・・・・・っ!

私はこのどうしようもない萌えを、船をぶん殴って静めた。





「うわっ!?ちょ、!船揺れる〜!」
「暴れるな!!」





それによって船が思いっきり揺れてしまい、ふたりに怒られてしまった。
私が怒られている様子を、ジェイは少し笑いながら見ている。

笑いながら見ている。

笑いながら見ている・・・・・・・?

私に向かって笑顔を向け・・・・っ!?





受け取った!ハニーの愛は受け取った!!」
「は?」
「私に向かってそんなに微笑むだなんて!そんなにまで私が愛しいのね?」
「あれ?嘲笑ってたつもりなんですけどね。変質者さんは目が悪いんですね。目医者にでも行かれたらどうです?」
「ハニーと行けるのならどこへでも!」
「ああ・・・・・頭の方も悪いんでしたっけね」
「あいつ・・・・の対応に慣れてきてるな・・・」





私とジェイのラブラブな会話(勘違い)に、セネルは小さくそう呟いた。
隣の方でノーマまでもが頷いている。
いや、よく見たらウィルとクロエも頷いてる。

私の対応って何だ。





「で、マリントルーパーって?」
「知らないんですか?」
「おうともよ!」
「マリントルーパーというのは、魔物を相手に海の治安を守るひとのことをいうんですよ」
「へ〜。ハニーは物知りねぇ」
「常識ですよ。そんなことも知らないなんて・・・・・・」
「あー、だからさっき驚いて私の方を見つめてたのね
見ていたんです





見つめてなんかいません。

そう言って、ジェイは船の運転に集中した。
ここからはジェイの後ろ姿しか見えず、表情がわからない。
靡く髪の毛が、まあとても素敵だけど。

やっと会えたんだもの。
顔が見えないなんて・・・・・・!





「セネル!もっとスピード出して!」
「?」
「愛しいハニーの顔が見えない!!」
・・・・・・・・・・・
「っておい!スピードを上げろって言ってんだろ!なんで間逆のことんの!?」
「いや、確かに落とそうとはしたが・・・俺じゃないぞ」
「え?」





落とそうとした。ってのが気になるけど、セネルじゃない?

それはウソじゃないようで、セネルも驚いた表情をしていた。
ノーマも「なんでなんで〜?」と混乱している。





「はっ、まさかハニーが・・・・・・」
「そんなことできませんよ」
「ちょ、の船・・・・後ろから煙が出ているぞ!」
「うっそ!?」





クロエにそう言われたので後ろを振り返ってみると、本当に煙がもくもくと出ていた。
煙が多くなるにつれて、船のスピードもどんどん落ちてくる。
ジェイの船との距離がどんどん離れていってしまう。

慌ててエンジンへ駆け寄り、なんとかしようとするも・・・・





「な、なにすれば・・・・・・?」
「どうしよ〜?ちょっとこれ、ヤバイ雰囲気じゃん!」
「み、水かけたら?」
「そんなことしたらエンジン壊れるじゃん!」





そうノーマが言った時だった。





ドカンッ





煙が出ていたエンジンが、突然大きな音を立てて爆発する。





うおっ!?
きゃーっ!?





爆発したエンジンからは火が。
これは、どうみてもエンジンが壊れたように見えるわけで。

エンジンが壊れてしまったこの船は、どんどんスピードがなくなって。
そしてジェイの船と、思いっきり離れてしまった。





「あー・・・ハニー」





静かな海で、私のそんな声だけが響いた。






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ジェイとの会話多すぎますか。