07
「「キュキュキュー」」
「むふふー」
「・・・・・・・・・・・・なーんか変なの混ざってるよ〜」
ピッポ、そして兄のキュッポに続けて私が声を出すと、即座にノーマのツッコミが入る。
でもそんなの気にしない。
私はただ、彼らのプリチーさにメロメロ(死語)だった。
それはクロエやシャーリィも同じようで。
ふたりもさっきから彼らを見つめては溜息をついている。
「・・・・・・・・・・で、さっきの所がモフモフ族がいた跡地?」
「そうだキュ!」
「この先に行けばもうすぐ出口だキュ!」
「それじゃあ引き続き道案内頼むキュ」
「が言ってもかわいくないから」
ノーマのキツイツッコミを流し、私は彼らに「よろしくねー」と言った。
それに対して「まかせてキュ!」と胸を張る彼らはべらぼうに可愛い。
私、シャーリィを助けた後はジェイを探すつもりだったけど、それより先にモフモフ族の村とやらに一度訪れたい。
きっと彼らと同じようなのがたくさんいて、あっちにモフモフ。こっちにモフモフ。
もうモフモフパラダイスなんだ。
そんな妄想をしながら先を進むと、突然キュッポたちが叫ぶ。
「キュキュー!」
「なに!?痴漢!?こんの・・・・・・・私の可愛いベイビーたちに何する・・・・・・」
「違うキュ」
「へ?」
「道が塞がってるんだキュ」
「なーんだ。そんなことか〜」
「って、結構大変なことだからそれ!な〜んだじゃないから!!」
あまりに可愛らしい彼らの叫びに、思わず痴漢かと思いきやそうではないらしい。
なんだ。剣を構えちゃったじゃないのよ。
キュッポたちはその塞がってる所へ近寄り、何かをしている。
「これなら少し掘って、向こう側に行けそうだキュ」
「セネルさんたちも手伝ってほしいキュ」
「ああ」
「わかった」
こうして野郎どもは肉体労働を始め、私達はしばしの休みになった。
+++++++++
「おーら、キビキビ働けー!!」
「キュッポたちになにかあったら容赦しねぇぞ!!」
「お前ら何偉そうに言ってんだよ!」
掘り続けるセネルたちにそう馬事を飛ばせば、少しこっちを睨みながらセネルが反抗する。
その際手が止まってしまったので、セネルはウィルに「休むな!」とゲンコツを喰らった。
温和そうな顔して厳しいおっさんだ。
「・・・・・はぁ、ほんとに可愛いなぁ」
「そうだな・・・・・・(うっとり)」
「もう食べてしまいたい」
「ちょっと、それ危ない発言だよ」
「そうですね。きっと毛皮にしたら最高なんでしょうねふふふ」
「ちょーーっと!?リッちゃんあんたそんなキャラだっけ!?」
天使の笑顔でサラリと恐ろしいことを言うシャーリィに、私とクロエは固まりノーマは冷や汗を掻きながらツッコんだ。
「冗談ですよ。ノーマさん」
「だ、だよね〜」
「あーんな小さい毛皮、いりませんよ」
「ってオオイ!!」
ふふふ。
そう微笑みながらシャーリィは言った。
この子ちょっとお腹のあたりが黒いんじゃないか?
あ、セネルがあまりにへタレだから「私がしっかりしなくちゃ!」という原理で黒くなってしまったんだ。
きっとそうに違いない。
「ねーねー」
「なんですか?」
「リッちゃんのそのブローチ、見せてくんない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・いいですよ」(にっこり)
「今の間はあえてなにもツッコまない!!」
ノーマのお願いに「・・・・・・・まじかよ」みたいな表情をしてから、営業スマイルになる彼女。
スマイルは0円だというけれど、シャーリィの場合は一億は軽くしそうで怖い。
ノーマは恐る恐るシャーリィからブローチを受け取り、まじまじと観察をする。
そしてひとりでなにかボソボソと呟いていた。
クロエは相変わらずモフモフに夢中だし、ノーマは考え事してるし。
自然に私とシャーリィの会話が始まった。
「さん」
「な、なに?(ビクビク)」
「いやだ、さんったら。別に取って食ったりしませんよ」
「だよねーあはは」
「さんって、今までお兄ちゃんと一緒に旅してきたんですよね?」
「旅ってほどでもないけど・・・・うん」
「その旅の間にお兄ちゃんに何かされませんでしたか?」
「特にはなにも」
「よかった・・・・・・」
不安そうに質問する彼女に笑顔でそう答えると、シャーリィは安心した様子で胸に手を当て安堵の息を吐く。
その様子が恋する乙女のようで。
年相応の彼女の姿に、私も安堵の息を吐こうとしたときだった。
「もしもなにかされてたら、私何するかわかりませんでした」
「・・・・・・・・・・・へぇー・・・。そ、そのときは一体どっちに鉄鎚を?」
「いやだわ。さんに暴力なんてふりませんよ!あの時お兄ちゃんを止めてくれたのに」
「・・・・・・・・・・・って、ことは?」
「おちろんお兄ちゃんに神の鉄鎚を喰らわせます」
「・・・・・・・・・・」
「私というものがありながら他の女性に手を出すなんて許せない。そうよ昔からそうだったわ。私がどんなにアピールしてもお姉ちゃんばっかりに目を向けて!私がテルクエスを見せた時だって私の方には興味も持たずお姉ちゃんに「テルクエス見せて!」とかぬかしやがってコンチクショウ!!私が今見せてんだろふざけてんのかああ?」
「・・・・・・へぇ〜・・・?」(汗
「水舞の儀式の話の時だってお姉ちゃんとラブラブオーラムンムンで!少しはこっちに気をつかったらどうなんだって話よ!!ったくあの頃から少しも成長してないんだからあの野郎!お姉ちゃんが死んだ途端私に構ってきて!どうせお姉ちゃんと死ぬ間際の約束でもしたんでしょ?はっ。でもお兄ちゃんが私を見てくれるってだけで嬉しい!でも私がちょっと転んだり攫われたりするぐらいですぐ泣き叫ぶもんだから・・・・はぁ。でも・・・・でも・・・・そんなお兄ちゃんに恋しているのは他でもない私なの」
「さ、さようでございますか・・・・・・」(真っ青)
すごいマシンガントーク。
ここまで息継ぎしないで言えるのってすごい。
「しゃ、シャーリィにはお姉さんがいたの?」
「はい。3年前に・・・死にましたけど・・・」
「あ・・・・・・ごめん」
「いいえ。ぶっちゃけ邪魔者がいなくなっててよっしゃ!!とか思ってますから」
「そこはウソでも悲しい素振りを見せなさい」
たった数分間の会話なのに、なんだかすごく内容が濃かった気がする。
そんな濃い会話がやっと終了した頃、ずっとブローチを見つめていたノーマがシャーリィへと一歩近づく。
「ね、リッちゃ〜ん」
「なんですか?」
「このブローチちょうだい!!」
「!ダメです!!」
ノーマがそう言った瞬間、すごい速さでブローチを取り返し握り締める。
その行動の速さは0.01秒。
すごい反応に私とノーマ、そしてクロエも驚く。
「このブローチは・・・・とても大切なものなんです!」
「なにか思い出があるの?」
「・・・・・・・・・なんだっけな」
「オオイ!!」
ブローチを見つめながらいう姿は、本当にそれが大切なんだという気持ちが伝わってきて。
なにか思い出でもあるのかと思い訊ねれば、彼女は思い出せない様子でそう言った。
なんだよ。大切なものじゃないのかよ。
「まあ色々あったんですよ。きっと」
「そんな他人事みたいに・・・・・・」
「だって3年以上も前なんですよ?そんなのいちいち覚えてられねぇっつーの」
「口調!口調変わってるよ〜!!」
「とにかく大切なんです。あげるわけにはいきません!!」
そんなことないんじゃないか?
そう思ったけれど、彼女の意思は固いようで。
ブローチをぎゅっと握り締めていた。
「諦めるんだなノーマ。無理強いはよくない」
ずっと成り行きを見守っていたクロエが、ノーマにそう話しかける。
「うー・・・・うん。わかった」
「うんうん」
「もう二度と欲しいとか言わない!だから売って!!」
「全然わかってないじゃないか!」
「値段によりますね」
「ちょっと待ておい!!」
あんなに大切だ大切だと連呼していたシャーリィが、ノーマの話にのってくる。
思い出なんかより金だ金。
そういうことなのかもしれない。
こんな金に溺れたヒロインなんて嫌!
ノーマはそろばんを取り出し、「こんぐらいでどう?」と話し合っている。
シャーリィはまだ安いと感じたらしく、首を横に振った。
そんな時、ずっと岩を掘り続けていた野郎どもとモフモフたちがやってきた。
「終わったぞ。・・・・・・・・・シャーリィ、何してるんだ?」
「(ぎくっ)な、なんでもないわ、お兄ちゃんv」
「?」
明らかに動揺したシャーリィに不思議そうに首を傾げるセネル。
そんなセネルに、彼女は営業スマイルを向けた。
兄にまで使うか。営業スマイル。
「みなさん、この先が出口だキュ!」
今さっき掘った所を指差し、キュッポが言った。
これでやっとこの土の中から開放されるらしい。
キュッポたちと別れるのはつらいけど、やっぱり日の光が恋しい。
出口だと聞いて、私は勢いよく立ち上がった。
「よし。あと一分張りだ」
ウィルがそう言うと、私達は再び歩きだした。
+++++++
「うわっ!?」
暫く歩いた頃、突然の地震に私達はよろめく。
ここは地震の多い場所なのか。
「な、長長悪魔がくるキュ!」
「長長悪魔?」
キュッポの言った言葉に私がそう言うと、ピッポがその長長悪魔について説明をしてくれた。
その長長悪魔のせいで、愛しいモフモフたちは住み慣れたこの地を離れることになったんだとか。
つまり、そいつがいなければここでモフモフたちに会えたってこと。
「長長悪魔・・・・・・ゆるすまじ・・・っ!!」
「おお!まさしく戦士の目だキュ!」
「というか、なんでそんなに燃えているんだ・・・・・?」
「き、きたキュ!!」
「よっしゃ!長長悪魔なんか私が倒してやらぁ!!」
「さん、男らしいキュ!」
「勇ましくて思わずキュンッvってしちゃいます!」
憎き長長悪魔を退治すべく、私は剣を構えた。
その長長悪魔というのは、悪魔というよりむしろミミズ。
ノーマが「気持ち悪い!」と後ろの方で騒いでいた。
私はその姿より、このくねくねした動きが気持ち悪いと思う。
私は剣を構え長長悪魔へと突き刺す。
しかしそれでは致命傷にすらならないのか、長長悪魔はピンピンしていた。
もう一度剣を突き刺しながら彼らに向かって叫ぶ。
「ここは私が足止めをするわ!みんなは出口を開いて!」
「俺も加勢する!」
「私もだ!!」
私が手間取っていると、セネルとクロエが加勢に来てくれた。
いつものようにセネルがクロエが連携技で足止めを。私は少し離れて晶術を使うことにした。
戦いは随分と楽になり、私達が優勢になる。
でも、
「ちょっと〜!ふたりじゃこの扉開かないって!!」
出口の方から、ノーマの困ったような声が聴こえる。
やっぱり、せめて4人じゃないとあの扉は開かない様子。
でもこっちも手が離せない。
そんなときだった。
「おらぁっ!!」
そんな勇ましい掛け声と共に、何かの破壊音があたりに響いた。
気になって後ろを見てみると、そこには爽やかな笑顔のシャーリィが。
「こうすればいいんですよ」(爽)
「ああああ!!遺跡が!!遺跡船の遺跡が粉々のボロボロにぃ・・・・・!!」
「うっせぇおやじ。遺跡と命どっちが大切だかわかるでしょう?」
「遺跡だ!」
「逝ってしまえ!!」
粉々になってしまった遺跡船の貴重な遺跡が粉々になってしまうと、ウィルは泣き崩れた。
どうやらシャーリィが扉をぶっ壊したらしい。
まぁ確かに出口は確保できたことだし、結果オーライ。
「ありがとうシャーリィ。助かったわ」
こっちも長長悪魔を倒し、彼女らの元へ駆け寄った。
「いいえ。お礼を言われることでもないですよ」
「いやいや、シャーリィすごく勇ましくて思わず惚れそうになっちゃった」
「うんうん。私もリッちゃんがいきなり扉ぶん殴ったときビックリしたよ〜」
「それだけ強いなら、山賊のアジトの時も自力で逃げられたのでは?」
「だって、助けてもらう方が演出的に好きですしヒロインっぽいかなって」
「・・・・・・・・・」
「あ、そうだ忘れてたわ。お兄ちゃん大丈夫?」
「兄に対しての扱い酷くないか?」
そんな会話を繰り広げていると、キュッポたちはシャーリィとセネルにそれぞれ何かを手渡した。
「貝殻・・・・・・?」
「それを持っている同士、意思の疎通が出来る・・・・・気がしたキュ!」
「わぁ、記憶が曖昧なのね。でもありがとう、毛皮」
「せめてモフモフって言ってあげて!」
「?よくわからないけど、それじゃあバイバイキュ〜」
笑顔で「毛皮」と言う彼女に涙ながらにツッコミ。
キュッポたちが理解してなかったのが唯一の救いだわ。
走り去る可愛いお尻・・・・・・じゃなくてモフモフたちに手を振った。
「くすん・・・・この遺跡は諦めよう。では長長悪魔の方を・・・・・・ってあああ!!!見るも無残な姿に!?」
「あー、だって原型留めたままでそこら辺に置いといたらキュッポたちが怖がると思って」
「私とでみじん切りにして」
「俺が最後にすりつぶしておいた」
「そっちの方がグロイだろう!?・・・・・・・ああ、サンプルを持ち帰って色々と調べようと思っていたのに・・・これじゃあまるで肉団子じゃないか・・・」
「それじゃあウィルっちの今夜の食事は鍋だね!」
「誰が食うか!!」
元・長長悪魔を見つめ涙を流すウィルをからかう。
このおっさん、最初のころは「頼れる父親」的ポジションだったのに、今ではすっかりこんなになってしまって。
少し同情。
「いや、まだ調べれば何かわかるかもしれない」と言いながら、長長悪魔のすり身を瓶に詰めるウィル。
そんなもん何時の間に。
そんなウィルを見つつ、先ほどから静かなシャーリィたちの方へと視線を移した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」
「どったの?」
「セネルとシャーリィが・・・・・・」
いつの間にか、彼らの姿はそこにはなかった。
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地下道でのシャーリィの台詞が長いですね。
読むのが面倒だっつーの!ってね。