05
「うわー、キラッキラしてる」
「水晶の森なんだからあたりまえだろ」
「今更そんなクールにしたって無駄よ。シスコン」
「・・・・・・・・・・・・」
シャーリィを攫った男が水晶の森へ向かったと聞き、私達は後を追っていた。
少し冷たくそう言えば、セネルはしゅん・・・とした表情を見せる。
まるでさっきのチャバの様で。
その姿はやっぱり仔犬を思い出させて。
どうしようもない萌えが体中を駆け巡り、私はプルプルと震えた。
「・・・・・・大丈夫か?」
「だ、大丈夫よクロエ」
私を心配そうに見つめるクロエに、作り笑顔を向ける。
だって笑顔を作らなきゃ、とんでもない顔をクロエに見せてしまうことに・・・・っ!!
さっきのセネルの状態(泣き叫ぶやつ)を、セネル本人から説明してもらった。
なんでも、昔からシャーリィのことになるとああなってしまうらしい。
それが無意識だというからタチが悪い。
なんでそこまで?
と訊ねると、セネルは「それは、ステラとの約そ・・・・」そこまで言って、自分の右頬を思いっきり殴った。
どうやらステラという女性との約束らしい。
でも知られたくない事情のようだったので、私は聴こえなかったフリをしてあげた。
さっきのパンチは、俺のバカ!の一撃だったっぽい。
「・・・・・・・・・・・・・・」
いまだにしょぼんとしているセネルは、やっぱり仔犬のようで。
放っておくのも可哀想だし、優しい私は慰めてあげた。
「セネルがどんなに重症なシスコンでも、私は気にしないよ。人それぞれ、みんな変な部分があるだろうし、セネルだけが変ってわけじゃないよ」
「・・・・・・」
私がそう言うと、セネルは「ありがとう」と小さく言った。
一応気にしてたのか、なんて思いつつやっぱりセネルの笑顔はかわいいと思わず見つめてしまう。
すっかり元気になったセネルの隣を歩きながら、さっき自分で言った言葉を思い出す。
人それぞれ、みんな変な部分があるだろうし
そうすると、目の前を歩いているウィルやクロエにも、人には知られたくない変な部分があるということになるのかも。
いや、まさか。
あんな真面目な人間に、変な部分があるわけない。
ウィルがあのデカイハンマーの中に美少女系フィギュアを入れてたり。
クロエのあの帽子の中に同人誌とかが入ってたり。
・・・・・・・・・・・そんなことがあるわけない。
そう思いつつも、今度あの中身を見てみたいと少し思ってしまった私がいた。
+++++++
暫く歩き続けると、突然の大きな振動と元気な少女の声が辺りに響く。
「うわーーーーーどいてどいてぇ!!」
元気な声がした先からは、黄色い服を着た少女が慌ててこっちへと進んでくる姿が見えた。
そのすこーし後ろからは、大きな蜘蛛みたいのがやってくる。
どうやら、あの蜘蛛から逃げている最中らしい。
困っているようなので、助けてやるかと剣を構える私の横で
「あれはクリスタラチュラ!いたって温和な性格でめったに人を傷つけない魔物ではないかぁ!!」
・・・・・・と、ウィルは大声で魔物の説明をしてくれた。
ん?
「・・・・・・・・だったら、なんであの子は追いかけられてるの?」
「クリスタラチュラは性格こそ温和だが、自分の巣に立ち入った者には容赦をしない!ずばり、あの少女はクリスタラチュラの巣に入ったんだろう!」
「へー。・・・・・・・説明してくれるのはいいけど、隣で大声出すのはやめてよ」
「俺は博物学者だからな!魔物を見ると興奮するんだ!!」
本当に興奮しきっているウィルの姿に、私はただ「へぇー・・・」としか返事を返せない。
ウィルの説明によると、巣に立ち入った者には容赦をしない。
ってことは、私達には危害が一切無いという事。
だったら攻撃をして、わざわざ怒らせる必要なんて無い。
あの子だってここまで来たって事は、それなりの戦闘能力はもっているだろうし。
私はそう考え、剣を鞘に戻した。
その様子を見ていた少女は「なんでーー!?」と嘆いている。
「助けてよ〜〜!どう見たってピンチじゃん!普通助けるじゃん!!」
「ごめーん、私達ちょっと用事があって、体力の無駄使いはしたくないの」
「酷い冷たい悲しすぎ!!もういい!」
少女はそう言って、再びどこかへと走り去って行った。
クリスタラチュラも、その後を追っていく。
「嵐が去った・・・・・・」
「って、あの少女を助けなくていいのか?」
私の呟きに、クロエがそう言う。
正義感の強い彼女のこと。きっとあの少女を放っておけないに決まってる。
だけど、わざわざあの少女を探して助けてあげる気にもならない。
遠回りになるかもしれないし、シャーリィが心配だし。
いや、シャーリィよりもセネルが心配。今度いつ発作が起きるかわからない。
「そんな暇はない。さっさとシャーリィを助け出さないと」
「だからって、あのまま放っておくことも出来ないだろう」
「俺は出来る」
「な・・・・・・っ!なんてやつだ。お前はシャーリィさえいればなんでもいいのか!」
「いい!」
「そこ!胸張って言うな!!」
セネルとクロエの言い合いを見守っていようとしていたけど、セネルの言葉に思わずツッコミを入れてしまう。
だってその言い方が、腰に手を当てて胸を張るもんだから・・・・・・。
私達の様子に溜息を吐くウィル。
「まぁ、シャーリィを助ける事を優先しつつあの少女のことも気にかけることにしよう」
結局ウィルがそうまとめ、私達は再び奥へと進みだした。
+++++++
「いや〜、あんたたち強いね!」
「そりゃどーも」
少女は元気よくそう言い、私達は溜息を吐いた。
ウィルにいたっては、少女にゲンコツを喰らわせていた。
「あの時は冷たいこと言ったくせに、結局は助けてくれてんじゃん♪」
「あんたがそう仕組んだんでしょうが」
「人聞き悪いこと言わない言わない!あたしはただ、利用させてもらっただけだから!」
「もっとタチ悪い」
奥へ奥へと進んだ私達は、またまたこの少女に会った。
そしたら彼女は「やった!」と言わんばかりに目を輝かせ、私達の方へと駆け寄り「あとは頼む!」みたいなことを言った。
何のことかと思い、彼女の後ろを見るとそこには怒り爆発のクリスタラチュラが。
よっぽど怒り狂っていたらしい。
何もしていない私達の方へと突進してきて、結局はクリスタラチュラと戦うはめになってしまった。
「あんた達って爪術士だったんじゃん。早く言ってよね〜」
私がさっきの回想をしている間に話は進み、彼女はにこにこしながらそう言っている。
その視線は何故か私へ向き、「だけど」と言葉を付け足した。
「名前は?」
「」
「だけど、は違うみたいだね」
って何。
「戦闘中を観察してたんだけどさ〜、ど〜もの爪だけ光ってなかった気がするんだけど、これって気のせい?」
いきなりのあだ名にびっくりしつつ、私は更に驚いた。
まさか観察されているとは思っていなかったから。
「ねぇってば〜、あたしの気のせいなの?どうなの?黙られると気になるじゃんよ〜!」
「気のせいじゃないよ」
「え!?まじ?でもさ、さっきブレス使ってたよね?バーンってやってたよね?」
「私のはブレスじゃなくて・・・・・・・」
晶術なんだよ。
そう言いかけたとき、私と彼女の間にセネルが割って入ってきた。
いきなり何かと思ったけど、私からはセネルの背中しか見えなくて表情とかがわからない。
「会って間もないやつに、ほいほい言うな」
それは、私が異世界人だということについてなんだろう。
私は別にいいんだけど、まぁセネルの意見も一理ある。
私のことを話して、もしも彼女が悪い奴・・・・・・には見えないけど、だったら何をされるかわからないし。
だけど、クロエにはすぐに説明した気が。
私はセネルの言葉に「わかった」と小さく返事をする。
そんな私達の会話に不満をもつ人が1人。
「ちょっと〜!そこまで言っといてそりゃないよ!気になる!すっごい気になる〜」
「ごめん。うちのシスコン隊長が”言うな”って言うから」
「シスコン言うな!」
「シスコンじゃん!重症の!!」
「ちょっと、シスコン隊長!あたしとの会話に割り込まないでよ〜」
「お前も言うな!」
シスコンってのは本当のことなのに、断固否定するセネル。
あ、そっか。無意識なんだっけね。
彼女は暫くむ〜っと言って頬を膨らませると、はっと何かを思いついたように目を輝かせた。
「そーだ!そーだよ!!」
「なにが?」
「親しくないから教えてくんないんでしょ?だったら、あたしも仲間に加えてよ〜。仲間だったら、別に隠す必要ないっしょ?」
「ああ、そういう考えもあるね」
「なに言ってんだよ!だいたい、お前を仲間に入れなきゃいけない理由がない」
「いーじゃん!そんなのなくたって!」
「よくない!俺達は先を急いでるんだ!」
「って、ことは、この先に行きたいわけだよね?」
「?当たり前だろ」
セネルがそう言うと、彼女はにま〜っとした顔を向けた。
「?」
「この先の橋、壊れてたよ」
「なんだって!?」
彼女の言葉に反応したのはウィルで、彼は彼女の指示す方へと歩き出す。
彼女の言葉は本当で。
ここの通り道に使うはずの橋は切り落とされ、私達は足止めを喰らうことになってしまう。
しかも、唯一通れそうな場所にも、ガラスのような氷のようなぶ厚いものが張っていて通れない。
「ここで提案!」
まだニマニマしたままの彼女は、大きく手を上げてセネルへと言葉を放つ。
「あたしがここを通れるようにしてあげるから、仲間にいれて!ね!」
「な・・・っ!」
「ほーら、急がないといけないんでしょ?だったらこんなとこで足止め喰らうわけにはいかないじゃん!」
「・・・・・・・・・・・・」
彼女の言葉に返せないセネル。
確かに彼女の言う通り。
私達は急がなきゃいけないし、こんな所で足止めなんか喰らってられない。
空飛ぶ男に攫われたシャーリィが、あいつに何をされるかわかったもんじゃない!!
セネルが言葉を返せないのを確認し、「き〜まり!」と彼女は嬉しそうに飛び跳ねた。
そして、持っていた短い杖のような物を持ち、歌い始める。
「今日〜も冴えてるあたしのブレス〜♪」
そして「グレイブ!」と言うと、大きな岩が地面から出てきて氷のようなものを割る。
それが割れると、通路が出現した。
これで先へと進むことができる。
「ど〜んなもんよ!」
「この馬鹿もん!!よくも自然の産物を台無しにしてくれたな!」
「うごっ!?」
エッヘンと胸を張る彼女に近づき、ウィルはゲンコツを喰らわせた。
彼女は痛そうに頭を両手で押さえた。
「ウィル、いいじゃん。これで通路が出来たんだしさ」
「しかし・・・・・・」
「ウィルはシャーリィと自然の産物、どっちが大事なわけ?」
「自然の産物!!」
「この博物マニアがっ!!」
迷いもなく即行で答えたウィルの左頬に、セネルの右ストレートが綺麗に決まった。
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台詞とかすっごいうろ覚えです・・・。
自然の産物とか言ってたっけ・・・・・・?
とりあえずウィルも変でごめんなさい。