03
「結構強いんだな」
「あ、見直した?見直した?」
山賊のアジトへの道のりでの何回目かの戦闘後、剣を鞘に収めている私にセネルが感心したように話しかけた。
「見直した?」とちょっとおどけて言ってみれば、「調子乗るな」と軽く小突かれる。
「セネルもなかなかだが、も強いな」
「そんなに褒めても何も出ないわよ?」
セネルの言葉に続くように、ウィルも私にそう言った。
何回かの戦闘でわかったことがある。
あっちの世界での晶術と、この世界でのブレスと、技はほとんど一緒だった。
ウィルが繰り出す晶術は、どれも見覚えのあるものばかり。
それともう1つ。
戦闘中自分の爪を見てみても、やっぱりセネルたちのように輝くことはなかった。
それでも晶術が使えたんだから別に言うことはないけれど。
「でもさ、ウィルってブレス系なのね」
「まぁな」
「そーんなデカイハンマー持ってるのに、後ろの方で呪文唱えてばかりだとちょっと笑えたり」
「あのな」
そんな会話をしながら進んでいく。
いくつかの橋を渡っていくうちに、周りの霧がだんだんと濃くなってきていた。
2人も同じように感じたらしく、辺りを見渡している。
風のせいで揺れる橋をゆっくりと渡っていると、どこからか野蛮な声が聴こえてくる。
それに混じって女性の声も。
耳を澄ましながらこの内容を聞き取っていると、「魔神剣!」という声とともに上から女性がふってきた。
「うわっ!?」
「橋を切り落とすとは・・・・・・無茶なことをするお嬢さんだ」
そうウィルが呟くと、上から降ってきた女性は私達の方を睨み剣を構える。
「まだいたのか・・・・・!」
「え?何の話?」
「山賊め!女性を人質にとるとは!!」
「ひ、人質?」
私達は3人。私とセネルとウィル。
その中での女性は私だけ。
ということは
「・・・・・・セネルたち、山賊だってさ」
「うるさい」
「勘違いだ。俺達は山賊では―――」
「問答無用!」
ウィルの弁解を聞かぬまま、女性は私達へと斬りかかってきた。
どうやら思い込みが激しいタイプらしい。
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「そ、そうだったのか・・・・・・」
「そ。セネルたちは山賊じゃないの。むしろ山賊から妹を奪還しようとする正義のヒーローよ」
「ヒーローって・・・・・・」
「すまなかった。私はてっきり・・・・・・」
チラッとセネルたちを見てから「山賊かと・・・」と小さく呟いた。
勘違いをしてしまったことが余程恥ずかしいのか、彼女は少し顔を赤くしていた。
その様子がとても可愛らしい。
「クロエもシャーリィを助けに来たんだって?」
「ああ。困っている人がいるのに見過ごすことなどできない」
「おおー。正義感溢れてるね」
名前も教えてもらい、すっかり打ち解けた私達。
私は、山賊から逃げながらもクロエとの会話を楽しんだ。
セネルも最初のうちはクロエとの行動に不満をもっていたようだったけど、今では彼女の実力も認めているようだった。
戦闘中はふたりのコンビネーションが良くて、簡単に勝つ事が出来たし。
クロエが仲間に入ってよかったよかった。
「も武器は剣なのだな」
「うん。クロエと被ってごめんね?」
「いいや。私の流儀とは全く違うものだし、それに強い」
「そんなことないって。クロエだって強いし」
「いや、は物理攻撃の他にブレスにも長けている。私なんか物理攻撃ばかりで・・・・・・を見習いたいものだ」
「そんなに褒められると・・・・・・」
照れるな・・・・・・。
こんなに褒められたのは生まれて初めてだったので、私は思わず顔を赤くする。
それを見てクロエが微笑んだ気がした。
「確かに・・・・・・本来なら物理攻撃のアーツ系と、魔法攻撃のブレス系とで分かれるものだが、はどちらもバランスがいいな」
「う、ウィルまで・・・・・・」
「の世界では、そういうのが普通なのか?」
「まぁ、得意不得意ってのはあるけど・・・・みんな物理攻撃と魔法両方出来てたわ」
「ふむ・・・・・」
「の世界?」
私とウィルとの会話で気になったのか、クロエが不思議そうな顔を私に向けた。
その視線は「何の話だ?」と訴えてきている。
ウィルが「言ってもいいか?」と訊ねてくるものだから、私は頷く。
別に隠したいことでもないし、仲間としてやっていくなら事情を知っていてもらった方がいいだろうし。
私が了承したのを確認してから、ウィルはあの話についてクロエに説明をし始める。
「いいのか?」
「なにが?」
「いや、別に」
セネルはそう言うと視線を私から移した。
きっと、さっきの檻の中での私の反応を思いだしたんだろう。
不思議に思うセネルに対して、私はうまく説明が出来なくて。
困っていた私の姿。
その反応から、あまり触れられたくないことだとセネルは解釈したのかもしれない。
「ありがと」
「なにが」
「いや、セネルなりに気遣ってくださったのかと思いまして」
「敬語、似合わないな」
「はは、やっぱり?」
普段使わないしね。
私の笑いにつられて、セネルも少し微笑んだ。
最初の頃は「かまうなオーラ」を出していた彼も、噴水広場以降から随分と心を打ち解けてくれている様子。
一体なにがきっかけだったのかはわからないけど、仲良くなれたならそれでいい。
一緒に行動していく以上、ギスギスした空気は耐えられない。
暫くするとウィルの説明も終わったようで、クロエが驚きの表情を浮かべていた。
「話終わった?」
「・・・・・・・レイナードの話は、本当なのか?」
「・・・・・・・れいなーど?」
「ウィルのファミリーネームだろ」
「ああ」
そうだったんだ。
「うーん、本当の話だけど・・・・・・・信じるも信じないのもクロエの自由」
「・・・・・・・・・・・・」
「異世界の人間は気味悪い?」
「そっ、そんなことはない!ただ、少し驚いているだけで・・・・・・」
「よかった」
「?」
「クロエに軽蔑されるかと思っちゃった」
たとえ出会って間もないとしても、共に戦った仲間。
その仲間に軽蔑されてしまうことほど悲しいことはないから。
「私は・・・・・・」
「うん?」
「私は、たとえ本当にが異世界の人間だったとしても、関係ない」
「?」
「は頼れる私の仲間だ」
「・・・・・・・ありがと、クロエ」
「れ、礼を言われることでもない」
少し微笑んで礼を言えば、照れたようにクロエはそっぽを向いた。
仲間だと認めてもらえたことが嬉しくて。
自然に笑みがこぼれる。
「クロエ大好き〜」と彼女に抱きつけば、避けることなく受け止めてくれた。
「着いたぞ」
私とクロエがじゃれあっていると、セネルが少し離れたところでこう言った。
慌ててセネルの元へ走り、目の前にある建物を眺める。
やっと目的地到着らしい。
「よーし!半裸のファンからアイドル奪還よ!」
「・・・・・・・・・ファン?アイドル?」
「おい、何の話だ」
私の気合を入れた掛け声に、この場にいる全員が立ちつくしていた。
アイドルって何だ。
そういう表情で。
おそらくみんなの代表で、セネルが私へと問いかける。
「え?だから、シャーリィはこの世界のアイドルで、湖に現れた男とか連れ去った半裸野郎はその子のファンなんじゃないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何がどうなって、そういうことになったんだよ」
「あの現場を目撃した結果、そういう結論に行き着いたんだけど」
違うの?
そう言うと、みんなは一斉に溜息を吐いた。
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主人公は、初級から上級まで全ての晶術をマスターしています。
剣技もリオンに鍛えられて結構な腕前。
セネルと一緒に前衛で戦っていましたが、クロエが仲間に入ってからは後衛にまわりました。