02
「なーんで私まで檻に・・・・・・」
私とセネルは、同じ檻の中で同じように不本意そうな顔をした。
そんな私たちを見て、オレンジのおっさん・・・・・じゃなくてウィルは溜息混じりに私の呟きに答える。
「セネルは街中での喧嘩。は街中での猥褻行為」
「ちょっと待って!私がいつ猥褻行為をしたっていうの!?」
「してたろ。実際に」
「街の人の証言によると、息を荒くしてか弱い少年に詰め寄ったそうじゃないか。おまけに襲おうとしたという・・・・・・」
「ちょっと違うわ。襲おうとしたんじゃないの。フリフリエプロンを着せようとしただけ!」
「どっちでも問題だろ」
「セネルの言う通りだ。―――少しそこで頭を冷やしてろ」
特に。
そう言ってウィルは檻を離れ、オマケに扉が閉まる音が聴こえた。
隣にいるセネルの表情を盗み見れば、拳を握ってくやしそうな顔をしていた。
さっきの女の子を早く助け出したいんだろう。
それなのにこんな檻に閉じ込められてしまった自分。
焦る気持ちと、くやしい気持ちと、そのふたつがこんがらがって、どうしようもないんだろう。
あの女の子とセネルの関係はよくわからないけど。
ああ、こんなことなら友人に詳しく内容を聞いておくんだった。
薄暗いこの場所で、ただ沈黙が流れる。
どうにか空気を和ませようと、話題を考える私。
「・・・・・・・あーあ、セネルのせいで少年に逃げられちゃったじゃない」
「まだそんなこと言ってるのか」
「そうよ。私は根に持つタイプなの」
「だろうな」
「(・・・・・・・・。)それじゃあセネルにエプロン着けてもらおうかしら」
「何をどうしたらそういう結論に至ったんだ」
多少ふざけてそう言えば、するどいツッコミをいれてくる。
よかった。少しは元気が出たのかもしれない。
だけど、これ以上この話題は続かない。
私は新たな話題を考える。
なんか話題話題。
えーっと
「あ、そうだ」
「?」
「さっき、変なおっさんと喧嘩してる時にさ、セネルの爪光ってたよね?」
「それがどうした?」
「いや、なんで光ってんのかな〜と。夜光塗料でも塗ってんの?」
「何のためにそんなの塗るんだよ。―――爪術だろ」
「そーじゅつ?」
「・・・・・・・知らないのか?」
「うん」
セネルの言った「そーじゅつ」ってのが理解できないでいると、彼は驚いたような表情を向ける。
え?私ってば変?
「そーじゅつって何?晶術じゃないの?」
「晶術?」
「あれ?知らない?あれだよ。魔法とか」
「だから爪術だろ」
「いや晶術だって」
お互い話が噛み合わない。
だって、魔法といえば晶術でしょ?レンズの力を使って火とか雷とか出すやつ。
いくら私が晶術だと言っても、セネルは「そーじゅつだろ」と言い張る。
ん?この世界では晶術がないのかしら?
「セネルの言う、その”そーじゅつ”って何なの?」
「爪術っていうのは―――」
爪術というのは術技の総称らしい。
爪術は全部で3種類あり、物理攻撃の「アーツ系」・攻撃や回復ができる「ブレス系」そして「ガスト系」。
ブレス系というのが、私の世界での晶術っぽい。
しかも、ブレス系は呪文書とスカルプチャがなければ術が出来ないとか。
スカルプチャってのが、TODやTOD2でいうレンズなのかもしれない。私はエルレインのお陰で、レンズなしでも使えるけど。
爪術と呼ばれる由来は、その名の通り爪が輝くからだとか。
「へぇー」
「・・・・・・・・本当に知らないんだな」
「うん。爪か・・・・私もこの世界では光るのかしら?」
「この世界?」
「え?あ、いや・・・・・なんかさ、セネルの話聞いてると、私の住んでた世界とは全然違うから、その・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「あーーー、この話は忘れて」
うまく言えないし。
それに、いずれは言う時がくるかもしれないし。
私は相当困ったような顔をしていたらしい。
セネルはそれ以上何も追求してこなかった。
爪術か・・・。
この世界では晶術は存在しない。ってことは、この世界では晶術は使えないって事?
術の名称とかも違うのかしら?
・・・・・・とにかく、この世界の情報がもっとほしい。
+++++++
「それじゃあ、いくつか質問をするから答えてくれ」
「へーい」
暫くしてからミュゼットさんという優しそうな老婆と、ウィルがこの場にやって来た。
彼らの会話を聞くところによると、さっきの女の子はシャーリィという名でセネルの妹らしい。
あれ?じゃあ「メルネス」ってのは?と思いつつ、聞くタイミングがなかった。
セネルの事情を聞いたミュゼットさんはセネルを檻から出し、おまけに私まで出してくれた。
ああ女神さま!
シャーリィを攫った山賊のアジトへ何らかの理由でウィルも行く事になったようで、セネルは不機嫌そうにする。
そんな成り行きを眺めていると、「さて」と言ってウィルが話題を変える。
そしてさっきの会話へと進んでいった。
今は檻のあった地下室から出て、リビングらしき所でソファーに座りながらウィルと向かい合うような態勢。
「まずは何を聞こうか・・・・・・」
「つーか、何で私って連れてこられたんだっけ・・・・・・?」
「服装が珍しいものだったものでな。少し気になった」
「なるほど?」
なんだ。それだけの理由で連れてこられたのか。
もっとすごい理由があるのかと思ったのに。
服装といえば、確かに少し違うかもしれない。
彼らのようにピッチリとした服じゃないしね(そこか)。
「キミはどこから来たんだ?大陸から来たのか?」
「大陸・・・・・?」
「違うのか?」
「つーかここって大陸じゃないの?」
「ここは遺跡船。船の上だ。ここに来る途中説明しただろう」
聞いてませんでした。
「・・・・・・・あー、そーだったですね」
「その様子だと聞いていなかったようだな」
「てへ☆」
「・・・・・・・・・・それじゃあキミはどこから?何しにここへ来たんだ?」
「いや、理由は無いっていうか・・・・・・・昼寝してて起きたらここにいたっていうか」
「それは・・・・・・?」
「こいつは爪術を知らなかったぞ」
困惑するウィルにうまく説明できないでいると、黙って立っていたセネルが私を助けるようにフォローをしてくれた。
「爪術を・・・・・・知らない?」
「ああ」
「それは本当か?」
「あ、うん。晶術なら知ってるけど」
「晶術?」
私がそう言うと、さっきのセネルと同じような表情をするウィル。
やっぱり聞きなれないものらしい。
とりあえず、私は簡単に晶術の説明をしておいた。
「・・・・・・・なるほど。そんなものが存在するのか」
「で、私はこの世界と私のいた世界とでは別のものと考えてるんだけど・・・・・・」
「うむ、俺もそう思う。爪術はここでは一般常識だ。それを知らないとなると余程の無知か、本当に知らないかのどちらかになる」
「後者だから。無知じゃないから」
「・・・・・・・はその晶術とやらは使えるのか?」
「まぁまぁ。普段は物理攻撃ばっかりだけど」
「実力は?」
「普通」
「うむ」
いくつかの質問をし、私が答えるとウィルは何やら考え込み始めた。
「―――よし。山賊のアジトへお前もついて来い」
「え?」
「相手は山賊だ。少しでも戦力があると助かるんだが」
要するに、シャーリィ奪還を手伝えと。
「どうだ?」というウィルの視線。
「いいわ」
やることも無いし。
少しでも役に立てるなら。
「セネルもいいな?」
「ああ」
ウィルの問いかけにあっさりと答えるセネル。
「なんでこんなやつ連れてくんだ!」とか言って反抗するものとばかり思っていたのに。
そんな意味を込めてセネルに視線を送れば、「頼む」とセネルは言った。
「―――まかせなさい。妹さんは必ず取り返してみせるわ」
「俺の邪魔はするなよ」
「へいへい」
とりあえず、少しは信用してくれているらしい。
「のいた世界について、少し興味がある。帰ってきたら色々と聞きたいんだがいいか?」
「別にいいわよ。その代わり、この世界のことも教えてくれる?」
「ああ」
「よっし!それじゃあパパッとシャーリィ奪還しますか」
セネルともどことなく仲良くなったし、この世界のことも知ることができそうだし。
始まりは上々。
剣を握り締め勢いよく家を飛び出し、私は街の外へと向かった。
「おい、そっちじゃないぞ」
「・・・・・・・・・・・・案内よろしく」
初っ端から進行方向間違えました。
それが恥ずかしくて顔を赤らめると、ウィルは呆れ、セネルは少し笑っていた。
笑われたことに多少怒りを覚えながらも、初めて見る彼の笑顔に免じて許してやろう。
今まで強張った顔だった彼の笑顔は、とても印象的。
「セネルかわいいー」
小さく呟いたつもりが、彼の耳にはしっかりと届いていたようで。
男が「かわいい」と言われても嬉しくないという原理なのか、それとも笑顔を見られた恥ずかしさからなのか、私は軽く頭を叩かれた。
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もう何が何だか。
ウィルが主人公を連れてきた理由、意味不明ですみません・・・。