「ジェイー!」





スタスタスタ





「ジェーイ!」





スタスタスタ





「ジェイってば!!」
「・・・・・・・ん?」





私よりずっと前を歩く彼に向かって名を連呼し続け、やっと気づいてもらえた。
ジェイは私の声に反応し、こっちをゆっくりと振り返る。

彼はずっと動かしていた足を止め、私がその場に来るのを待った。





「何してるんですか?」





やっとジェイの元へ着くと、彼は淡々とそう私に言った。





「ジェイってば、歩くの早いんだもの。もう少しゆっくり歩いてよ」
「どんな早さで歩こうと僕の勝手でしょう。さんが頑張ってついてくればいいんです」





最も、一緒に歩こうなんて言ってませんけど。
そう彼は付け足した。

確かに。
私はただ、アイテムの買い足しに行くと言ったジェイに勝手についてきただけ。
それで歩くのが早い彼に、段々とついていけなくなって。





「・・・・・・・・・・ジェイ冷たい」
「こういう性格ですので」
「まぁそこがたまらなく萌えるんだけど」
「・・・・・前々から気になってたんですけど、その『モエ』というのは何なんですか?」





萌えというのは、とにかくすごくうあ〜〜〜って言いたくなる感情で。
可愛かったりかっこよかったり。
鎖骨だったりわき腹だったり。

人それぞれ、萌えるポイントというものは違うけど、とにかく色んな感情を押し込めた単語なの。
少なくとも私はそう思う。


・・・・・・・・・・・・・・・って説明したいけど、説明したらしたでものすごくひかれるような。

これ以上変なイメージは与えられないので、私は簡単に説明をすることにした。





「素敵な単語よ」
「・・・・・・・・・・・」





少し、目が泳いでいたかもしれない。
ジェイは怪しそうに私を見つめ、溜息をついた。





「・・・・・・・・とにかく、すごく不快な単語だということですね」
「いやだから素敵だって」
「少なくとも、僕にとっては違うと思いますけど?」





そりゃそうだろう。


私の反応に「やっぱり」という顔をした後、ジェイは片手に持ったメモに視線を移した。
そんな彼の横に移動し、メモをのぞき見る。
見るっていっても、この世界の文字は理解不能で読めたもんじゃないけれど。





「あと買ってないのは?」
「バナシーアボトルだけです」
「よっし。それじゃあわざと遠回りをしてジェイとのデートの時間を長引かせよう」
「・・・・・・・・デート・・・?」
「そうデート」
「いつの間にデートになったんですか?ただのアイテムの買い足しだったばずですが」
「ジェイとふたりっきりなら、アイテムの買い足しだろうがなんだろうがデートなのよ」





きっぱりと私がそう言うと、ジェイは黙り足を止めた。
いつものように、「何意味わからないこと言ってるんです?」とか言ってくるかと思ったのに。

驚きながらも、私も同じように足を止める。
歩いていた足を止め、ただ黙っているジェイ。
何も言ってこない。




―――怒らせた?




理由はよくわからないけど、黙っているということは怒りに震えているのかも。
それかただ呆れてるのかも。


どっちにしろ、ふざけるのはよした方がいいかもしれない。
いや、私はいつでも本気だけど。


そう思っていると、ずっと足を止めていたジェイが突然アイテム屋とは反対方向の道へと足を動かした。





「ちょっと・・・・ジェイ?」
「なんです?」
「どこ行くの?」
「アイテム屋ですけど」





不思議に思ってそう訊ねれば、ジェイはそう答える。
アイテム屋?
いやだって、そっちは反対方向・・・・・・。





「アイテム屋はあっちだけど・・・」
「いいんですよ。こっちで」





あれ?もしかしてこっちの方向じゃなかった?
いやまさか。

ここ灯台の街は、最初の頃には迷ったものの、今ではすっかり道は覚えてしまっている。
アイテム屋への道も間違ってないはず。


意味がわからない。
という表情をしている私を見て、ジェイはクスリと笑った。

そして足をこっちへと進め、私の目の前までやってくる。





「デートなんでしょう?」





微笑みながら、彼はそう言った。





「・・・・・・・・・・へ・・・?」
「それじゃあ行きますよ」
「あ、ちょっと待って・・・・・・」





私の驚きの表情を見た後、ジェイはくるっと方向展開し歩き出す。

その歩調がやっぱり早くて。
いきなり歩き出す彼を慌てて追った。


そんな私を見たジェイは、また優しい笑みを私に向ける。
そして、手をすっと差し出した。





「・・・・・・・・ん?」
さんは足遅いですから。手を繋いでないと、はぐれちゃいそうですし」
「・・・・・・どうせ足遅いですよ」





いつになく優しいジェイ。
いや、もともと優しい子だけど。

ジェイ自ら手を繋ごうとしてくるなんて・・・・・・っ!
そんな貴重な体験にものすごく萌えたり。
皮肉交じりだけど、優しいジェイに嬉しく感じたり。

そんな感情を表に出さないように、少し拗ねたフリをする。



差し出してくれている手にそっと手を乗せ、握り締める。

私の手を握る彼の手は、以外に大きくて。
だけど指はスラッとしててすごく長くて細くて。
手から伝わるジェイの体温が心地いい。


そんな風にジェイの手を堪能していると、彼が小さく呟く。





「それに、デートですしね」





そう呟いた彼は優しく微笑んでいた。


今日はいつになく優しくて、笑うな・・・・。
いつもこんなだったらいいのに。
そう思いつつ声には出さない。



アイテム屋に着くまでお互いに何も言わず、会話はなかった。
ただ







を繋いで笑んで









::::::::::::::::::


長編でのジェイの登場が少ないので、短編で補い。